外国人労働者への批判と「フェアコンシデレーション」の現実
シンガポールで外国人就労者が直面するローカルからの圧力と、フェアコンシデレーション・フレームワーク(FCF)の実態。EP保持者の日本人が知っておくべき制度と空気感を解説。
この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。
「シンガポールで外国人が仕事を奪っている」——そんな批判がSNSで流れてくるのは、一度や二度ではない。在住日本人も無関係ではない話だ。
FCF(フェアコンシデレーション・フレームワーク)とは
FCFは2014年にシンガポール人材省(MOM)が導入した制度で、企業がEP(エンプロイメントパス)を申請する前に、シンガポール人市民・永住者を採用候補として十分に検討したかを確認する仕組みだ。
具体的には、EP申請に先立ち、Jobsバンク(MyCareersFuture)に14日以上求人を掲載する義務がある(一部の少額給与帯や少規模企業は免除あり)。MOMはこの掲載データを使って「自国民を不当に排除していないか」を審査する(出典:MOM公式サイト、FCFガイドライン)。
実際に何が起きているか
建前と実態は、やや乖離している。Jobsバンク掲載は行っても「そもそも採用する人は決まっていた」というケースは、外資系企業でよく聞く話だ。ただし、MOMはFCF違反を発見した企業をFCFウォッチリストに掲載し、EP申請の審査を厳格化する措置を取っている。実際に制裁を受けた企業名が公表されたこともある(2020〜2021年頃に複数社が公表対象になった)。
一方、EP申請そのものも2020年以降に要件が段階的に引き上げられている。2025年時点での一般的なEP取得の目安は、月給SGD5,000(約57万5,000円)以上が基本ラインで、年齢・業種・学歴によってさらに引き上げられる(出典:MOM公式サイト)。
日本人が感じる「空気」
在住日本人の多くはEP保持者として就労しているが、日常業務の中で「なぜ外国人を雇うのか」という局面に遭遇することはほとんどない。むしろ多国籍チームが当然という職場が多く、そもそも「外国人対ローカル」という対立軸を感じにくい環境にいる。
批判的な声が上がりやすいのは、インドIT系企業による同国籍採用の集中問題だ。特定の国籍・民族の採用が偏ることへの反発は、「外国人全般」への反発とは少し異なる文脈で語られている。
長期的な文脈
シンガポールは人口370万人強の都市国家で、自国民だけでは高度人材を賄えない構造上の制約がある。政府もそれを認識しており、「外国人材を活用しつつ自国民の機会も守る」という綱引きは制度設計の根幹だ。
在住日本人として気をつけたいのは、制度の変化に敏感でいることだ。EP要件の引き上げ・FCF運用の厳格化は今後も続く可能性がある。自分のビザ更新時期に近づいたら、MOM公式サイトで最新の給与基準と職種要件を確認しておくのが無難だ。