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自然・気候

「ガーデンシティ」は作られたものだった——シンガポールの緑化政策の内側

シンガポールの「花の都市」「ガーデンシティ」は意図的な政策の産物。建国以来続く都市緑化の歴史、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの設計思想、樹木管理の徹底ぶりを解説します。

2026-06-16
緑化政策ガーデンシティ都市環境

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シンガポールの幹線道路を走ると、両脇に木が並んでいる。整然と、等間隔に、管理された状態で。

「熱帯だから緑が豊か」ではない。植えて、管理して、維持している。ガーデンシティは自然に生えてきたものではなく、1965年の独立以来、政策として作り続けてきたものだ。

リー・クアンユーの「緑化命令」

シンガポールの緑化政策は、初代首相リー・クアンユーの強いこだわりから始まった。

1967年の「国家緑化キャンペーン」以来、道路の植樹、公共スペースへの緑配置、建物の緑化義務が継続的に推進されてきた。リー・クアンユー自身が視察して「あの木が元気がない」「この通りにもっと植えろ」と指示したというエピソードが複数残っている。

政治的強権と都市緑化が結びついた、世界でも珍しい事例だ。

樹木はデータベースで管理される

シンガポールの公共エリアの樹木は、個別にタグ付けされてデータベース管理されている。

NParks(国立公園局)が全樹木の位置、樹種、健康状態を把握し、定期的に点検・剪定を行う。倒木リスクのある木は事前に伐採・補植される。「熱帯だから木が多い」のではなく、「管理しているから倒れない」のだ。

2020年には「木が突然倒れて人が亡くなる」事故がいくつか起き、管理の強化が図られた。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイのコンセプト

マリーナ・ベイ・サンズの隣にある「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は、ガーデンシティ政策の集大成として2012年に開業した。

101ヘクタールの広大な植物園で、温室(フラワードームとクラウドフォレスト)には地球上の様々な気候帯の植物が集められている。「スーパーツリー」と呼ばれる高さ25〜50mの人工樹木は、夜間にライトアップされる。

観光施設としての機能もあるが、この場所の意味は「自然を超えたものを人工で作ることで、都市の魅力を高める」という実験でもある。

「シティ・イン・ア・ガーデン」への転換

2011年頃、シンガポールの都市戦略は「ガーデンシティ(都市の中の庭)」から「シティ・イン・ア・ガーデン(庭の中の都市)」へと言葉が変わった。

違いは微妙だが、都市に緑を「付け加える」から、都市全体を緑の中に「埋め込む」という発想の転換を示している。ビルの屋上緑化、高架下の緑道、インターチェンジのランドスケープ設計——緑が建築と一体化した形が進んでいる。

日本人が感じる「なんか整い過ぎ」感

シンガポールの自然を見て「人工的すぎる」と感じる日本人は少なくない。

確かに、雑然と草が茂る場所がなく、全てがきれいに刈り込まれている。虫が多いわけでも、泥道があるわけでもない。「自然」というより「自然のシミュレーション」に近い。

これを「本物ではない」と批判する視点もある。一方で、限られた国土で都市と緑が共存するための解として、シンガポールが出した答えでもある。どちらが正しいかではなく、それぞれの都市の選択が見えてくる対比だ。

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