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HDB転売時の落とし穴——Resale Levyを知らずに家を買う危険

シンガポールのHDB(公営住宅)を売却して次の住宅を購入する際に発生するResale Levy。PR取得後にHDB購入を考えている日本人が知っておくべき制度の仕組みと対策。

2026-05-20
HDBResale Levy不動産PR住宅購入

この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(SGD)の金額を基準にしてください。

シンガポールのPR(永住権)を取得した日本人の中には、HDB(Housing and Development Board、公営住宅)の購入を検討する人がいる。シンガポール国民の約80%がHDBに住んでおり、不動産市場の中核をなす。

HDBの新築(BTO)は市場価格より大幅に安く供給される。3部屋フラット(約65㎡)でBTO価格が300,000〜400,000SGD(3,450万〜4,600万円)程度。同条件のResale(中古)市場では500,000〜700,000SGD(5,750万〜8,050万円)になることもある。

この価格差に「得だ」と飛びつく前に、Resale Levyという制度を理解しておく必要がある。

Resale Levyとは

HDBから政府補助を受けて購入した住宅(BTOや2回目のHDB購入で補助を受けた場合)を売却し、再度HDBを購入する場合に課される追加費用だ。

金額は購入したHDBの部屋タイプによって異なる。

部屋タイプResale Levy(2回目購入時)
2部屋15,000 SGD(173万円)
3部屋30,000 SGD(345万円)
4部屋40,000 SGD(460万円)
5部屋45,000 SGD(518万円)
Executive50,000 SGD(575万円)

なぜこの制度があるのか

HDBは政府が市場価格以下で供給する「助成住宅」だ。BTOで購入する際に受けた補助金を、転売益として回収されないようにするための仕組みがResale Levyだ。

つまり「安く買って高く売り、また安く買う」というループを防ぐために設計されている。政府の立場からすれば、公的住宅を投機の道具にさせないための当然のガードレールだ。

PR保有の日本人が注意すべきこと

PRはHDBのResale市場でのみ購入可能(BTOは原則シンガポール国民のみ)。したがって、PRの日本人がHDB Resaleを購入し、将来売却して別のHDBを買う場合にResale Levyが適用される可能性がある。

また、以下の条件も重要だ。

  • MOP(Minimum Occupation Period): HDB購入後5年間は売却不可。この間に帰国が決まると、売却も賃貸もできない期間が生じる
  • PRの2人世帯が条件: PR単独ではHDBを購入できない。PR同士のカップル、またはPR+シンガポール国民の世帯が必要
  • PRがHDBを売却して出国する場合: 再入国義務(Re-Entry Permit)の更新に影響する可能性がある

コンドミニアムとの比較

Resale Levyを避けたいなら、最初からコンドミニアム(民間住宅)を購入する選択肢がある。コンドミニアムにはResale Levyは存在しない。ただしABSD(Additional Buyer's Stamp Duty)が外国人・PRに課される。

PRのABSD税率は5%(2024年時点)。1,000,000SGD(1.15億円)のコンドミニアムを買う場合、ABSDだけで50,000SGD(575万円)かかる計算だ。

判断のフレームワーク

住宅購入は「帰国の可能性」を含めて検討する必要がある。

  • 5年以上確実にシンガポールにいる → HDB Resaleは選択肢に入る
  • 3〜5年で帰国の可能性がある → MOPを満たせないリスクがあるため慎重に
  • 長期居住だが将来の住み替えを想定 → Resale Levyのコストを織り込む

「家を買う」という行為の裏側に、政府の住宅政策の思想が張り巡らされている。シンガポールで住宅を購入するとは、その政策の論理の中に自分を組み込むことでもある。

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