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ウェットマーケットが消えない理由——スーパーと共存する生鮮市場の現在地

シンガポールではスーパーマーケットが普及した今も、朝の「ウェットマーケット(生鮮市場)」に客が絶えない。その理由と、使い分けの実態、変化しつつある利用者層を解説します。

2026-06-17
ウェットマーケット食材ローカルライフ

この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

朝7時のウェットマーケット。魚の跳ねる音、肉を切る音、野菜売りのおばちゃんの大声。床が濡れていて(だから「ウェット」マーケット)、鶏の羽が舞う。

スーパーマーケットが全国に普及した現代のシンガポールで、なぜこの市場が残っているのか。コールドストレージやFairPriceがあれば不要では——そう思うかもしれないが、そうはなっていない。

「鮮度」と「目利き」の価値

ウェットマーケットの最大の利点は鮮度だ。

魚は早朝に入荷し、多くが当日中に売れる。消費者は実際に目で見て、触れて、匂いを確かめて選ぶことができる。スーパーのラップに包まれた切り身とは根本的に違う「選ぶ体験」がある。

さらに、馴染みの売り手に「今日のおすすめ」を聞けることが、ウェットマーケット独特の価値だ。「この魚は今日の朝獲れで特においしい」「今日の豚肉は柔らかい部位がある」といった情報はスーパーでは得られない。

価格はスーパーより安いことが多い

ウェットマーケットの野菜・肉・魚は、一般的にスーパーより安い傾向がある(推定。品目・市場・時期により異なる)。

仲介コストが少なく、包装コストもなく、土地代も安い場所にあることが多い。特に在地の中華系・インド系・マレー系の家庭料理に使う特定の食材(中国野菜、香辛料の原型、内臓類など)は、スーパーでは扱いがなかったりする。

利用者層の変化

かつてウェットマーケットの主要顧客は高齢者と主婦だった。近年は、料理好きの若い世代や、オーガニック・ローカル食材への関心が高まっている層が訪れるようにもなっている。

特に「どこで育てられたか」「いつ獲れたか」を知りたいフード・コンシャスな消費者が、スーパーよりウェットマーケットを好む傾向がある。

一方で、若い世代はまだ少数派で、市場の担い手(売り手側)も高齢化している。後継者問題はホーカーと同じく存在する。

ウェットマーケットとFairPriceの使い分け

実際の生活者は、ウェットマーケットとスーパーを目的に応じて使い分けている。

  • 週1〜2回の生鮮品まとめ買い:ウェットマーケット
  • 調味料・缶詰・乳製品・輸入品:スーパーマーケット(FairPrice、Cold Storage等)
  • 急な追加食材:近くのコンビニやミニマート

「全てウェットマーケット」でも「全てスーパー」でもなく、それぞれの長所を組み合わせるのがシンガポールの買い物スタイルだ。

旅行者にはおすすめの朝の時間

観光者にとっても、朝のウェットマーケット見学はリアルなシンガポールを見る機会だ。

商業施設に来る観光客が多い中で、ウェットマーケットはシンガポール人の「普通の朝」を見ることができる場所のひとつ。アダムロードやテカ、チョーチュカンなどのウェットマーケットが見学しやすい。入って歩き回るだけで、その雰囲気を感じ取ることができる。

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