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ウェットマーケット(朝市)がスーパーに駆逐されない理由

シンガポールには今も生鮮食品を扱うウェットマーケットが多数存在します。スーパーマーケットが普及した現代でも朝市が生き残る経済・文化的な理由を解説します。

2026-04-12
ウェットマーケット朝市食文化生活

この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。

朝6時のアンモキオ・ウェットマーケットは、すでに人でごった返している。鶏をさばく音、魚の並ぶ水槽、葉物野菜を積み上げた台車。スーパーマーケットが数十メートル先にあるにもかかわらず、老若男女がここに集まる。

ウェットマーケットとは

「ウェットマーケット」は生鮮食品(肉・魚・野菜・果物)を扱う市場の総称で、アジア全域に存在する。「ウェット」の名称は、市場内に常に水が流れていること(魚の水槽、床の洗浄)に由来する。シンガポールでは多くがHDB(公共住宅)の1階や、ホーカーセンターに隣接する形で配置されている。

スーパーより安く、鮮度が高い

在住者に聞くと、ウェットマーケットを使い続ける理由として「鮮度」と「価格」が圧倒的に多い。

例えば、チキンの部位はスーパーで購入すると冷蔵・冷凍処理されたものが一般的だが、ウェットマーケットでは店頭でさばいたばかりの温かい鶏肉が購入できる。シンガポール人の間では「ウェットマーケットのチキンでないとチキンライスの味が出ない」という認識があるほどだ。

価格でもスーパーより安いことが多い。葉物野菜は1束0.5〜1.5SGD(約57〜172円)程度で、スーパーの半値に近いケースも珍しくない。

政府による意図的な保護

シンガポール政府はウェットマーケットを都市計画の一部として意図的に維持している。NEA(国家環境庁)が管理する施設として、改装補助や衛生管理のサポートを提供している。

理由の一つは、ホーカーセンターと組み合わせた「生活インフラ」としての機能だ。ウェットマーケットで食材を買い、隣のホーカーで朝食を食べる——このパターンが特にシニア世代の日常に組み込まれており、コミュニティの場としても機能している。

課題:後継者不足

一方で、ウェットマーケットの出店者は高齢化が進んでいる。肉屋や魚屋を続けたいという若い世代が少なく、廃業が相次いでいる。2000年代以降、シンガポールのウェットマーケットの店舗数は減少傾向にある。

政府は若い商人の育成プログラムや、デジタル注文システムの導入支援を試みているが、体力的にきつく早朝から働く職種として敬遠される傾向は変わっていない。

在住外国人にとっての価値

ウェットマーケットは、シンガポール生活に慣れてきた外国人にとって「地元の日常」を垣間見る場所だ。英語が通じるケースも多く、ちょっとした交渉も楽しめる。スーパーにない食材(レモングラスの根、生のバナナリーフなど)が見つかることも多い。観光スポットとして紹介されることは少ないが、シンガポール食文化を最も素直に体感できる場所のひとつだ。

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