「タイは物価が安い」は2020年以前の話——インフレ率・バーツ高のデータで確認する
2019年から2025年のバンコクの家賃・食費・光熱費の実数推移をデータで確認。「タイは安い」が通用しなくなった背景と、今から移住するなら何が得で何が損かを整理する。
この記事の日本円換算は、1THB≒4.9円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(THB)の金額を基準にしてください。
「タイは物価が安い」と言い切れたのは、2019年までの話だ。2020年以降に何が変わったのか、データで確認する。
インフレ率の推移: 2019〜2025年
タイのCPI(消費者物価指数)ベースのインフレ率推移(世界銀行・タイ商務省)。
| 年 | インフレ率 |
|---|---|
| 2019 | 0.71% |
| 2020 | -0.85% |
| 2021 | 1.23% |
| 2022 | 6.08% |
| 2023 | 1.23% |
| 2024 | 0.40% |
| 2025 | 0.20% |
2022年に6.08%の急騰がある。エネルギー価格と食料品価格の上昇が主因だ。2023年以降はインフレ率自体は落ち着いているが、2022年に上がった物価水準が元に戻ったわけではない。
2019年から2025年までの累積インフレ率は約9.3%(過去5年平均1.8%)。つまり、2019年に100バーツだったものは2025年に約109バーツになっている。
バンコクの家賃: 2019年 vs 2025年
バンコクのコンドミニアム家賃の推移(Colliers Thailand・各種不動産レポート)。
| 物件タイプ | 2019年(THB/月) | 2025年(THB/月) | 変動率 |
|---|---|---|---|
| スタジオ(中心部) | 12,000〜18,000 | 15,000〜22,000 | +25〜22% |
| 1BR(スクンビット) | 18,000〜30,000 | 22,000〜38,000 | +22〜27% |
| 2BR(スクンビット) | 30,000〜50,000 | 38,000〜60,000 | +20〜27% |
日本人駐在員が多いスクンビットエリアでは、1BRの家賃が6年間で約25%上昇している。2025年Q3のGrade Aアパート賃料はTHB 591/㎡で、前年比6.5%上昇(Colliers、2025年Q3)。
日本円換算すると、スクンビットの1BRはTHB 22,000〜38,000(約108,000〜186,000円)。東京の同等エリアと比べてまだ安いが、「圧倒的に安い」とは言いにくい水準になっている。
食費の変化
バンコクの外食費(ローカル価格)の推移。
| 食事 | 2019年(THB) | 2025年(THB) | 変動率 |
|---|---|---|---|
| 屋台の麺類・ご飯もの | 40〜60 | 50〜80 | +25〜33% |
| ローカルレストラン(1食) | 80〜150 | 100〜200 | +25〜33% |
| 日本食レストラン(ランチ) | 200〜350 | 250〜450 | +25〜29% |
| コンビニ弁当 | 45〜65 | 55〜80 | +22〜23% |
屋台の一皿が40バーツ(約200円)だった時代は終わりつつある。2025年時点ではTHB 50〜80(約245〜392円)が相場だ。
日本食レストランのランチはTHB 250〜450(約1,225〜2,205円)。東京の日本食ランチとの差はかなり縮まっている。
光熱費・通信費
| 項目 | 2019年(THB/月) | 2025年(THB/月) | 変動率 |
|---|---|---|---|
| 電気代(エアコン使用あり・1BR) | 1,500〜3,000 | 2,000〜4,000 | +33% |
| 水道代 | 100〜300 | 150〜400 | +33〜50% |
| インターネット | 600〜900 | 500〜800 | -17〜-11% |
| 携帯電話(SIM) | 300〜700 | 300〜600 | -14〜0% |
通信費は安くなっている。電気代はエアコン利用が前提のバンコクでは家計への影響が大きく、約33%上がっている。
為替の影響: バーツ高と円安のダブルパンチ
物価の変動に加えて、為替が追い打ちをかけている。
| 時期 | 1THBあたりの日本円 |
|---|---|
| 2019年平均 | 約3.4円 |
| 2022年平均 | 約3.8円 |
| 2025年平均 | 約4.3円 |
| 2026年4月 | 約4.9円 |
2019年から2026年で、1バーツの円換算が3.4円→4.9円。約44%の円安バーツ高だ。
つまり、バーツ建てで25%上がった屋台飯(THB 40→50)は、円建てでは136円→245円と約80%上がっている計算になる。
「安いから来た」人が感じているギャップ
2019年以前にタイに移住した日本人が感じている物価上昇は、以下の3つが重なっている。
- バーツ建ての物価上昇: 累積約10〜25%(品目による)
- 円安バーツ高: 約44%
- 日本食・日本製品への依存度: 輸入品はさらに割高に
この3つの合計で、「体感の物価」は2019年比で50〜80%上がっている。「月15万円で暮らせる」と聞いて来た人が、実際には月20〜25万円かかっているケースは珍しくない。
今から移住するなら何が得で何が損か
まだ得な領域:
- タクシー(Grab): THB 100〜200で市内移動。東京のタクシーの3分の1以下
- マッサージ: THB 300〜500(約1,470〜2,450円)。東京の半額以下
- ローカル屋台: THB 50〜80(約245〜392円)。東京のコンビニ弁当と同等
- 医療費(自由診療): 日本の健康保険適用後と同等か、場合によっては安い
もう得ではない領域:
- 日本食レストラン: 東京とほぼ同等
- コンドミニアム家賃(駐在員エリア): 東京の同クラスと大差なし
- 日本の食材・日用品: 輸入品は東京より割高
- カフェ・スタバ類: THB 150〜200(約735〜980円)。東京と同等
「タイは安い」という言い方は、もう正確ではない。「タイのローカル生活は日本より安い。日本的な生活をするならほぼ同じ」が2026年時点の正確な表現だ。