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タイのココナッツは「捨てるところがない」——1本の木が生む7つの産業

タイは世界第6位のココナッツ生産国。果肉・水・油・殻・繊維・葉・木幹——1本のココナッツの木から7つの製品が生まれ、それぞれが別の産業チェーンに乗る。

2026-05-19
ココナッツ農業産業副産物輸出

この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(THB)の金額を基準にしてください。

タイのセブンイレブンでココナッツウォーターのパックがTHB 25(約108円)で売られている。日本のスーパーで同じものを買えば300〜500円。この価格差は、タイがココナッツの生産国だからというだけではない。ココナッツの実から水を取った後の果肉・殻・繊維がそれぞれ別の産業に流れ、廃棄率がほぼゼロに近いからだ。1つの原材料を完全に使い切る構造が、個々の製品のコストを下げている。

1本のココナッツから生まれる製品

部位製品産業
果肉ココナッツミルク、ココナッツクリーム、デシケイテッドココナッツ食品加工
ココナッツウォーター飲料
ココナッツオイル(食用・化粧品用)食品・美容
活性炭、炭、工芸品化学・工芸
殻の繊維(コイア)ロープ、マットレス、園芸用土繊維・農業資材
屋根材、編み物建材・工芸
木幹建材、家具建設・家具

タイ南部のナコーンシータマラート県やスラーターニー県はココナッツ農園が密集しており、周辺にはこれらの副産物を加工する中小企業が集積している。

ココナッツミルクの輸出大国

タイはココナッツミルクの世界最大級の輸出国だ。日本のスーパーで見かける缶入りココナッツミルクの多くはタイ製で、チャオコー(Chaokoh)やアロイディー(Aroy-D)はタイのブランドだ。

タイ料理においてココナッツミルクは不可欠な食材で、トムカーガイ(ココナッツミルクのスープ)、グリーンカレー、レッドカレー、マッサマンカレー、デザートのカオニャオマムアン(マンゴースティッキーライス)——いずれもココナッツミルクがベースだ。

バンコクの屋台でグリーンカレーを1皿THB 50〜80(約215〜344円)で食べられるのは、ココナッツミルクが安いからだ。ココナッツミルクの原価が上がれば、タイ料理全体の価格が上がる。

猿の収穫問題

タイのココナッツ産業は「猿を使った収穫」が国際問題になった。訓練された猿(ブタオザル)がヤシの木に登って実を収穫する伝統的な方法だが、動物愛護団体から「強制労働」として批判を受け、欧米の一部の小売チェーンがタイ産ココナッツ製品のボイコットを表明した。

これを受けて、タイのココナッツ業界は機械収穫への移行を進めている。ただし人力と猿による収穫の方がコストは安く、小規模農家にとって機械化は投資負担が大きい。動物福祉と農家の生計のバランスは、簡単には解決しない。

活性炭という意外な輸出品

ココナッツの殻から作る活性炭は、タイの意外な輸出品だ。水の浄化フィルター、空気清浄機、金の精錬——活性炭の用途は広く、ココナッツ殻由来の活性炭は品質が高いとされている。

タイのココナッツ経済を見ると、「副産物をどれだけ活用できるか」が産業全体の効率を決めていることがわかる。日本では廃棄されるものが、タイでは別の産業の原材料になっている。この循環構造は、ココナッツに限らず、タイの農業全体に見られる特徴でもある。

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