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住まいと不動産

プール付きコンドの幻想——使わない設備に家賃を払う心理

バンコクのコンドミニアムはプールやジムが標準だが、実際に使う住民は少ない。それでも人気が衰えない理由を、ステータス・資産価値・管理費の現実から読み解く。

2026-08-12
コンドミニアム不動産管理費住まいタイ

この記事の日本円換算は、1THB≒4.9円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨(THB)の金額を基準にしてください。

バンコクのコンドミニアムには、たいていプールとジムがある。物件広告の主役で、内見でも必ず案内される。だが平日の昼にプールを覗くと、たいてい誰もいない。住民の多くは、使わない設備に毎月お金を払っている。

設備は使うためでなく見せるためにある

プールやジム、ロビーの豪華さは、実用性より象徴性で選ばれている。「プール付きのコンドに住んでいる」という事実そのものが、住む人の生活水準を示すラベルになる。実際に泳ぐかどうかは二の次だ。

これは無駄遣いではなく、住まいが持つ社会的な機能の一部だ。家は雨風をしのぐ場所であると同時に、自分が社会のどこにいるかを示す記号でもある。プールはその記号として、最も分かりやすく効く。広告写真に必ず青い水面が映るのは、そのためだ。

資産価値という現実的な理由

象徴だけの話ではない。プールやジムのある物件は、売却・賃貸に出すときの競争力が高い。設備が貧弱な物件は買い手・借り手から敬遠されやすく、価格がつきにくい。

つまり住民は、自分が使わなくても、将来手放すときの値崩れを防ぐために設備のある物件を選ぶ。使用価値ではなく交換価値のために維持費を払っている。投資目的で買う人が多いバンコクの市場では、この計算が特に強く働く。

管理費というコスト

設備を維持するには費用がかかる。共用部の管理費は専有面積に応じて毎月かかり、プールの水質管理、ジムの機器、警備、清掃などに充てられる。使わない人も、使う人と同じく按分で負担する。

築年数が経つと、この管理費の使われ方が物件の価値を左右する。修繕積立がきちんと回っている物件は設備がきれいに保たれ、放置された物件はプールが濁り、ジムの機器が壊れたまま放置される。同じ「プール付き」でも、中身は管理組合の運営力で大きく変わる。

設備の幻想と賢い選び方

豪華な設備に惹かれて契約し、結局一度も使わなかった——という入居者は珍しくない。借りる前に、自分が本当に使う設備かを冷静に見極める価値はある。実用で選ぶなら、設備より立地や管理状態の方が暮らしやすさに効く。

ただし将来の売却・転貸まで視野に入れるなら、使わない設備にも意味が出てくる。プール付きコンドの値段には、泳ぐためではない複数の理由が織り込まれている。何を買っているのかを意識すると、選び方が変わる。

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