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スクンビットを出たことがないエクスパットへ——バンコクの「外国人バブル」の地理学

バンコクのスクンビット・トンロー・エカマイ周辺に集まる日本人駐在員と、BTSから2駅外れたタイ人の日常の間にある見えない境界線を具体的に描く。

2026-04-13
エクスパットスクンビットバンコク生活在住者日本人コミュニティ

この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

バンコクに赴任して1年経った後も、BTS・スクンビット線のアソーク〜トンロー間しか知らない日本人駐在員は多い。

住むのはトンロー・エカマイのコンドミニアム。昼食は日本食か和洋折衷のカフェ。週末のショッピングはエムクオーティエかエムポリアム。子どもは日系インターナショナルスクールのスクールバスで通学する。

これが「エクスパットバブル」と呼ばれる生活圏だ。

バブルの地理的輪郭

スクンビットの「日本人エリア」はBTSのプロンポン〜エカマイ周辺(スクンビット通り20番台〜60番台)に集中している。この数キロ四方に日本食レストランが200店以上、日本語対応の医療機関・学習塾・美容室が揃っている。

賃料はバンコクの相場より高い。2LDKコンドミニアムの月額賃料は40,000〜80,000THB(約17〜34万円)が相場で、会社が負担する「住宅手当」でカバーされることが多い。

BTSのラインに沿って外国人居住者が集積し、そこから外れると急速に「タイの日常」が現れる。BTS駅から歩いて20分、タクシーで15分のエリアでは、英語メニューのないタイ料理食堂、市場で安い青果を買う主婦、バイクが溢れる路地——別の都市に来たような感覚になる。

コストの二重構造

バブルの内側と外側では、同じバンコクでも生活コストが大きく異なる。

スクンビットの日本食レストランでのランチは800〜1,500THB(約3,440〜6,450円)。ガパオライスが60〜80THB(約258〜344円)の路地の食堂とは10〜20倍の価格差がある。

スーパーマーケットも違う。エクスパット御用達のヴィラマーケットやグルメマーケットは輸入食品を多く揃えるが、価格は地元スーパー(マックスバリュ・フードランド)の1.5〜2倍になることがある。

「バンコクは物価が安い」という認識は、バブルの外側での生活を前提にした場合には成立する。バブルの内側で日本人向けのサービスを使い続けると、コストは日本の都市生活に近づく。

バブルを出た日本人たちの話

一方、意図的にバブルから出た在住者もいる。

チャオプラヤー川の西岸(トンブリーエリア)に住む日本人は「賃料が半額で広い部屋に住める。タイ語が必要だが、それが面白い」と語る。ラートプラオやミンブリーなどの東部住宅地に住み、タイ人コミュニティの中で生活する日本人もいる。

バブルを出ると、タイ語を学ぶ必要性が高まる。英語が通じない場所で買い物・医療・日常会話をこなすうちに、語学が伸びる。「バンコクでタイ語が話せるようになった」という人の多くは、バブル外に住んでいた経験を持つ。

どちらを選ぶかは価値観の問題

バブル内の生活が「悪い」わけではない。子育て中の家族にとって、日本語環境・慣れた食事・日本人コミュニティへのアクセスは実用的な価値がある。

ただ、「タイに住んでいる」という事実と「タイの日常生活を経験している」は別のことだ。5年バンコクに住んでも、タイ人の日常に触れる機会がほとんどなかった——という在住者は想像以上に多い。どの範囲を「生活圏」にするかは、タイでの経験の深さに直結する。

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