タイのリタイアメントビザ——「老後の楽園」は本当か、数字と制度で確認する
タイNon-OAビザ(リタイアメント)の取得条件、維持コスト、落とし穴。在住者目線で整理した実態レポート。
この記事の日本円換算は、1THB≒4.4円で計算しています(2026年4月時点)。
「タイで悠々自適な老後を」——この言葉に惹かれてリタイアメントビザを検討している方は多いと思います。ただ、実際の取得条件や維持の手間を調べると、「楽園」という言葉が少し霞んでくる部分もあります。先に数字と実態を確認しておく価値があります。
Non-OA(リタイアメント)ビザの基本条件
タイのリタイアメントビザは「Non-Immigrant OA Visa」と呼ばれます。取得条件(2026年4月時点の情報):
- 年齢:50歳以上
- 財力証明(いずれか一つ):
- タイの銀行口座に80万THB(352万円)以上の預金残高
- 月収65,000THB(28.6万円)以上の年金・収入証明
- 預金50万THB(220万円)+月収65,000THBの証明を組み合わせ
これに加えて、無犯罪証明書、健康診断書、健康保険の加入証明が必要です。
「維持」のコストが見落とされがち
ビザ取得より見落とされがちなのが、ビザの維持コストです。
リタイアメントビザの有効期間は1年で、毎年更新が必要です。更新のたびに銀行残高証明(80万THB)の提出が求められます。つまり常時80万THB(352万円)をタイの銀行口座に「眠らせておく」必要があります。
加えて2019年以降、健康保険の加入が必須になりました。外国人向けの民間医療保険は年間50,000〜200,000THB(22万〜88万円)が相場で、年齢や健康状態によって大きく変わります。60代後半〜70代では保険料が跳ね上がる、または加入拒否されるケースもあります。
また、90日ごとに最寄りのイミグレーションオフィスで「90日報告」という住所届け出が義務付けられています。オンライン申請も可能ですが、システムが不安定で直接出向く場合もある。
実際にかかる年間固定コストの試算
| 費用項目 | 年間目安 |
|---|---|
| ビザ更新手数料 | 1,900THB(8,360円) |
| 健康保険(60代、標準的なプラン) | 80,000〜150,000THB(35.2万〜66万円) |
| 機会損失(80万THB預金固定) | 運用できれば年利3%で24,000THB相当 |
| コンドミニアム賃料(中堅物件) | 15,000〜30,000THB/月(66万〜132万円/年) |
保険だけで年間数十万円がかかる計算で、「タイは生活費が安い」という感覚が崩れる場合があります。
日本人在住者のリアルな声
「80万THBを眠らせておくのがもったいない」という声は多い。一方で「日本の年金でバンコクではかなり豊かに暮らせる」という声も本当です。
生活費の実態は、食事を屋台中心にするか日本食レストランに行くか、どのグレードのコンドミニアムに住むかで全く変わります。スクンビット高番台(プロンポン〜エカマイ)の外国人向けコンドに住んで日本食中心の生活をすると、月40,000〜70,000THB(17.6万〜30.8万円)は必要です。
タイのリタイアメント移住が「コスパが良い」かどうかは、どのライフスタイルを選ぶかに完全に依存します。