タイのカトゥーイ——「第三の性」が経済的に自立できる社会構造
タイのトランスジェンダー文化「カトゥーイ」。その社会的背景と経済的な自立構造を、在住者の視点で解説する。
この記事の日本円換算は、1THB≒4.4円で計算しています(2026年4月時点)。
パタヤのアルカザールショー、バンコクのキャバレーで華やかに踊るカトゥーイ(タイのトランスジェンダー女性)を見た旅行者は多いと思います。しかし「なぜタイにはカトゥーイが多いのか」「どういう社会構造が彼女たちを生んでいるのか」を考えたことはあるでしょうか。
カトゥーイとは何か
カトゥーイとは、生物学的には男性として生まれ、女性のアイデンティティを持つ人を指すタイ語です。「第三の性」として社会的に認知されており、タイ仏教の輪廻転生観では「前世の行い」との関係で語られることもあります。
日本語で「ニューハーフ」に相当しますが、タイ社会における受容度は日本とは異なります。コンビニのレジ、航空会社の客室乗務員、教師、デザイナーなど、職種を問わず働いているカトゥーイに日常的に会えるのがタイの特徴です。
経済的自立を可能にする産業構造
タイでカトゥーイが経済的に自立しやすい背景には、複数の産業が関わっています。
エンターテインメント産業: アルカザールショー(パタヤ)やカリプソキャバレー(バンコク)など、カトゥーイが主役のショービジネスは観光産業の一角を占めます。チケット代は600〜1,200THB(2,640〜5,280円)で、年間数十万人規模の集客があります。
美容・ファッション産業: カトゥーイはメイクやファッションの感覚が鋭いとされ、美容師、メイクアップアーティスト、スタイリストとして活躍する人が多い。バンコクの高級サロンでカトゥーイのスタイリストに指名が入るのは珍しくありません。
観光・ホスピタリティ: 語学力と接客スキルを活かし、ツアーガイドや高級ホテルのフロントとして働く人もいます。
社会的受容度の「実態」
「タイはLGBTQフレンドリー」とよく言われますが、在住者からは「社会的可視性は高いが、法的権利は限定的」という声も聞かれます。
タイには2025年時点で同性婚を認める法整備が進んでいますが、カトゥーイの法的性別変更については制限が残っています。パスポートや身分証明書の性別欄を変更することは、現状では法律上できません(関連法案の審議が続いている状況)。
軍の徴兵検査では「精神障害」として免除される扱いが長年続いており、当事者からは批判の声があります。
日本人在住者との関わり
バンコクに住む日本人が美容院を探すと、高確率でカトゥーイのスタイリストに当たることがあります。日本語や英語を話せる人も多く、「日本人向けサロン」よりも安くて技術が高い場合も。
在住者として大切なのは、カトゥーイを「観光の見せ物」として見るのではなく、普通に生活・仕事をしている同じ社会の構成員として接することです。タイで長く快適に暮らすために、そのくらいの認識が基本になります。