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バンコクのバイクタクシーはなぜオレンジのベストを着ているのか——許可制と配車アプリの摩擦

バンコクに独特の交通手段、バイクタクシー。政府許可制度とGrab・Lineマンの競合、運転手の収入構造まで、路上の経済を解説。

2026-04-13
バイクタクシー交通Grabギグワーカーバンコク

この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

バンコクのBTS駅を出ると、オレンジ色のベストを着た男性たちがバイクを並べて待っている。近くに寄ると「どこ行く?」と声をかけてくる。

これがバンコクのバイクタクシー(モーターサイ)だ。

なぜオレンジのベストなのか

タイのバイクタクシー運転手は、陸上交通局(DLT)が発行する「バイクタクシー許可証」を持ち、公式に登録された「乗り場(ウィン)」で客を待つ義務がある。その証として着用が義務付けられているのがオレンジのベストだ。

ウィンはエリアごとに仕切られており、各ウィンに所属できる運転手の数は限られている。新規参入には既存メンバーの「承認」が必要で、ウィンの「権利」は金銭で売買されることもある。旧来の組合的な利権構造が色濃く残っている。

2025年時点でバンコクの登録バイクタクシー運転手は約10万人とされているが、非公式(無ベスト)で営業している運転手も相当数いるとみられている。

Grab・Line Manとの共存と摩擦

2015年頃からGrab(ライドシェア)がタイで普及し始め、バイクの配車機能「GrabBike」も登場した。さらにLINEグループ傘下の「Line Man」(食事・荷物配達)がバイク便サービスを拡大した。

登録バイクタクシーの組合はアプリ系サービスを「既存制度の破壊」として反発した。政府との折衝が続き、現在はGrabBikeを含む配車アプリのバイクサービスは法的グレーゾーンを通り抜けながら営業している。

実態として、同一の運転手がオレンジベストを着てウィンに並ぶ「公式バイクタクシー」としての仕事と、GrabBikeドライバーとしての仕事を使い分けているケースは多い。

料金と使い方

ウィンのバイクタクシーは交渉制だ。近距離(1〜2km)で20〜40THB(約86〜172円)、中距離(3〜5km)で50〜100THB(約215〜430円)程度。渋滞の激しいバンコクで、路地の奥まで入れるバイクタクシーは「最後の1km」の解決手段として機能する。

GrabBikeはアプリ上で料金が表示されるため、価格交渉が不要だ。旅行者にとってはこちらの方が使いやすい。GrabBikeで30〜80THB(約129〜344円)程度。ただし雨の日や渋滞時はサージプライシング(需要連動の価格変動)で高くなる。

運転手の実態

ウィンのバイクタクシー運転手の収入は、稼働時間と場所によって大きく異なる。ビジネスエリアのウィンで一日10時間稼働すると、日に500〜1,200THB(約2,150〜5,160円)ほどになるとされる。月換算で15,000〜36,000THB(約6万4,500〜15万4,800円)だが、バイクの燃料・メンテナンス費・ウィンの「会費」を引くと手取りはさらに下がる。

地方から出てきた若者がバンコクで最初に就く仕事のひとつとしてバイクタクシーが選ばれる背景には、参入障壁の低さと現金日払いの即時性がある。

渋滞するバンコクの路上で、オレンジのベストは今日も走り続けている。

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