「ムエタイ留学」は本当に安いのか——バンコクのジムに3ヶ月通った場合の実費計算
日本からムエタイ修行でタイに来る人が増えている。実際にかかるジム費用・生活費・ビザの現実を数字で整理。ロマンと実態のギャップを明確にする。
この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
「タイでムエタイを習う」という選択が、格闘技愛好家の間で一種のライフスタイルになっている。SNSで「月5万円以下でジム生活」という投稿が流れているが、その内訳を見ると想定外の出費が隠れていることが多い。
実際のコストを積み上げてみる。
ジム費用の実態
バンコクのムエタイジムは大きく3つのカテゴリに分かれる。
観光客・外国人向けの「インターナショナルジム」では、月額10,000〜18,000THB(約4万3,000〜7万7,400円)が相場だ。1日2回(朝・夕)のトレーニング、タイ人トレーナーの個別指導が含まれる。宿泊込みのプランもあり、月20,000〜30,000THB(約8万6,000〜12万9,000円)で部屋とトレーニングがセットになる。
地元ジム(ローカルジム)は安い。月2,000〜5,000THB(約8,600〜2万1,500円)で参加できる場所もあるが、指導が全てタイ語で行われ、外国人向けの説明はない。タイ語が全くわからない状態では練習についていくのが難しい。
ビザ問題——「修行」は観光ビザでできるか
タイの観光ビザ(ビザ免除)は30日間の滞在を認める。3ヶ月滞在を計画する場合、ビザランまたはタイ語学生ビザ(ED Visa)の取得が必要になる。
ビザランは隣国に出国して再入国する方法だが、2022年以降タイ当局のチェックが厳しくなっており、同じ境界を短期間に繰り返すと入国拒否のリスクがある。
ED Visaは語学学校に通うことが前提で、ムエタイジムの場合はジムが語学学校として登録されているかどうかが重要だ。登録されているジムであれば90日のEDビザで合法的に滞在できる。ジム選定時にビザサポートの有無を確認する必要がある。
3ヶ月の実費シミュレーション
バンコク郊外(オンヌット周辺)で生活した場合の試算。
| 費用項目 | 月額目安 |
|---|---|
| ジム代(インターナショナル) | 12,000THB(約5万1,600円) |
| 家賃(スタジオ、ジム外) | 7,000〜10,000THB(約3万〜4万3,000円) |
| 食費(屋台中心) | 4,000〜6,000THB(約1万7,200〜2万5,800円) |
| 交通費 | 1,500THB(約6,450円) |
| その他(医療・用品等) | 2,000THB(約8,600円) |
| 合計 | 約26,500〜31,500THB(約11.4〜13.5万円) |
「月5万円以下」は宿泊込みプランかつローカルジムを選択した場合に限られる。インターナショナルジムで快適に通うなら月10万円以上が現実的な数字だ。
ムエタイの経済的側面
ムエタイはタイの文化遺産であると同時に、大きな産業でもある。プロ選手として活動するタイ人ファイターの多くは地方出身で、10代から試合に出始める。勝利報奨金は試合規模によるが、地方の小さな試合では1試合1,000〜3,000THB(約4,300〜1万2,900円)程度のこともある。
バンコクのラジャダムナーンスタジアムやルンピニースタジアムでの試合になれば報奨金は上がるが、それでも日本のプロスポーツと比べると格段に低い。外国人の「ムエタイ留学費」が、タイ人トレーナーの収入を支えている側面がある。
3ヶ月のムエタイ生活を終えて帰国したとき、格闘技の技術以上に残るのは「タイ人と一緒に練習した時間の感覚」だという声をよく聞く。その経験の値段をどう見るかは、人それぞれだ。