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イサーン農村の日常——バンコク在住者が見落とすタイの別の顔

タイ東北部イサーン地方の農村生活を通じて見えるタイの別の顔。バンコクの高層コンドやソーシャルメディアには映らない、タイ人口の約3分の1が暮らす地方の現実。

2026-04-28
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この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年4月時点)。

バンコクのコンドで生活していると、タイを「分かった気」になりやすい。しかしタイ人口の約3分の1(2,200万人以上)はイサーン(東北部)に暮らしており、その日常はバンコクとはまったく異なる。

ロイエット——イサーンの典型的な農村県

ロイエット県(Roi Et)はコンケンとウボンラーチャターニーの間に位置する農業県だ。人口は約112万人(2020年国勢調査)、県庁所在地でさえコンビニが数えるほどしかない。

農村部の主な生業は稲作だ。コメの収穫期(10〜11月)になると田んぼは金色に変わり、一家総出での作業が始まる。この時期、バンコクで出稼ぎしていた若者が帰省するため、都市のサービス業や建設現場では一時的に人手不足になる。

暮らしのコスト

農村部の生活費はバンコクの半分以下で収まることも珍しくない。

  • 屋台の朝食(カオトム・ガイ): 30〜40バーツ(約130〜172円)
  • 地元市場での食料買い出し(1日分): 100〜200バーツ(約430〜860円)
  • 電気代(エアコン少な目): 月300〜600バーツ(約1,290〜2,580円)

一方、医療・教育へのアクセスはバンコクより大幅に劣る。専門医にかかるためにコンケンやウボンの大病院まで移動する必要がある場面も多い。

イサーン文化とラオスとの関係

イサーン文化はラオス・クメール文化と深く融合している。言語は標準タイ語と異なる「イサーン語(ラオ系言語)」が日常会話で使われ、バンコク出身のタイ人には完全には理解できないことがある。

料理ではソムタム(青いパパイヤのサラダ)・ガイヤーン(焼き鳥)・カオニャオ(もち米)がイサーン発祥であり、今や全国的な料理になっている。バンコクのソムタム屋で「ガムピー(イサーン訛りの注文)」が飛び交うのは、出稼ぎイサーン文化がそのまま都市に持ち込まれたものだ。

バンコク在住者との社会的な距離

バンコクで働くタイ人の多くはイサーン出身か、両親がイサーン出身だ。建設業・家事サービス・トゥクトゥク運転手・農業労働者など、都市の基層労働を支えている。

一方、バンコクの中上流階層はイサーン地方を「貧しい田舎」と見る視線が根強くある。この経済格差・文化格差はタイ政治にも反映されており、2010年前後の赤シャツ・黄シャツ対立の背景のひとつでもあった。

在住外国人がバンコクだけでタイを語ると、この層の存在をすっぽり見落とす。タイを理解したいなら、一度イサーンの農村を訪れる価値がある。タイ人の友人・知人がいるなら、出身地の話を聞くだけでも別のタイが見えてくる。

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