タイ料理の辛さレベル交渉術:日本人が注文で失敗するパターンと対策
「マイペット(辛くしないで)」と言ったのに激辛が出てくる——タイ料理の辛さ交渉で失敗しないための実践的な注文フレーズと考え方。
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「マイペット」と言ったのに、出てきた料理で口が燃えた。タイに来て最初の1ヶ月、こういう経験をした日本人は多い。問題はタイ人の「辛くない」と日本人の「辛くない」の基準が根本的にずれていることだ。
なぜ「マイペット」が通じないのか
「マイペット(ไม่เผ็ด)」はタイ語で「辛くない」を意味する。これは正しい。でも、タイ人のコックにとっての「辛くない」は、日本人基準では「めちゃくちゃ辛い」に相当することがある。
タイ料理の辛さ基準は文化的に異なる。タイ人が幼少期から食べ続けてきた辛さの「ゼロ基準」が、日本人の「かなり辛い」と同じ水準なのだ。
特に問題になるのがローカル食堂(コープクルア・食堂)。観光客向けのレストランでは辛さを調節してくれるが、地元の屋台や家庭料理に近い食堂では、外国人向けの「辛さ調整」という概念が薄い。
効果的な辛さ表現フレーズ
基本:「辛くして」「辛くしないで」
| 状況 | タイ語 | 発音(カタカナ) |
|---|---|---|
| 辛くしないで | ไม่เผ็ด | マイ・ペット |
| 少し辛くして | เผ็ดนิดหน่อย | ペット・ニット・ノーイ |
| 普通の辛さで | เผ็ดปานกลาง | ペット・パーン・グラーン |
| とても辛く | เผ็ดมาก | ペット・マーク |
追加フレーズ:「本当に」を強調する
「マイペット」だけでは効果が薄い場合、以下を追加する。
- マイサイ・プリック(ไม่ใส่พริก):唐辛子を入れないで
- マイサイ・プリック・リョーイ(ไม่ใส่พริกเลย):唐辛子を一切入れないで
「プリック(พริก)」が唐辛子の意味。具体的な食材名を出すほうが伝わりやすい。
料理別の「辛さ地雷」マップ
要注意:想定外に辛い料理
ソムタム(パパイヤサラダ)
辛さがデフォルトでかなり強い。唐辛子の量を1〜2本(一本でもきつい場合がある)に減らすよう伝える。「プリック・ヌン・メット(唐辛子1粒)」が使える。
ガパオ炒め
ガパオはホーリーバジルを使った炒め物で、屋台の定番メニューだが、辛さの個人差が大きい。「マイサイ・プリック」でほぼ辛くない版が作れる。
カー・タム(鶏のスパイス炒め)
見た目より辛いことが多い。南部タイ料理として出されることが多く、辛さが強い傾向がある。
ゲーン・ペット(赤カレー)
「ペット」は辛いという意味。名前に「辛い」が入っているとおり、レベルが高め。バンコクの観光向けレストランでは辛さを落とした版が多いが、ローカルでは本格的。
比較的安全な料理
- カオマンガイ:茹で鶏のせご飯。辛さはタレで調整
- パッタイ(屋台の焼きそば):基本的に辛くない。テーブルの唐辛子は自分で調節
- トムカーガイ(ガランガルとレモングラスのスープ):ハーブが主体で唐辛子は少なめ
失敗パターン別の対策
パターン1:「辛くしないで」と言ったのに辛い
おそらく唐辛子を減らしてくれたが、辛さの基準がずれている。次回は「プリックを入れないで」と食材名で指定する。
パターン2:注文後にコックに伝わっていない
注文をウェイターに伝えても、コックに届いていないことがある。特に屋台では、コックに直接「マイサイ・プリック」と言いながら指を振ると伝わりやすい。
パターン3:食べている最中に辛さが後から来る
タイ料理の辛さは油と唐辛子の組み合わせで後から増幅することがある。最初の一口で「辛くないな」と思っても油断しない。ナンプラー(魚醤)ベースのスープも時間が経つと辛みが出ることがある。
辛さと戦う実践的な対処法
辛すぎた場合の応急処置として、タイ人がよくやること:
カオ(白ご飯)を追加する
辛みを中和するのに最も効果的。食堂でご飯を追加してもらう(カオ・プラウ・プーム、と頼む)。
ナムプラーオ(砂糖入り水)を飲む
甘みが辛さを和らげる。水よりも効果がある。牛乳が最強だが、タイ料理と一緒に飲む習慣はない。
酸味のある食材を食べる
ライムや酢などの酸味が辛さを分散させる効果がある。
在住者として「辛さ耐性」を育てる
バンコクやチェンマイに数年住むうちに、辛さに慣れてくる在住者は多い。最初は「マイサイ・プリック」だった注文が、1年後には「ペット・ニット・ノーイ」に変わっていく。
強制的に慣れるより、自分のペースでスパイスの量を少しずつ増やしていく方が無理なく楽しめる。タイ料理の本当のおいしさは、適度な辛さと甘み・酸味・うまみのバランスにある。辛さだけが全てではない。
旅行者であれば無理に辛い料理を食べる必要はない。タイ料理には辛くないメニューも多く、辛さゼロでも十分おいしい料理がある。「辛いのが嫌いです」は恥ずかしいことでも何でもなく、正直に伝えてしまうのが一番早い。