タイ料理の「辛さ」は種類がある——ナムプリック・プリックキーヌーの世界
タイ料理の辛さはひとつではなく、唐辛子の種類・調理法によって性格が異なる。甘い辛さ、酸っぱい辛さ、痺れる辛さ——タイの辛さのバリエーションと付き合い方を解説します。
この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
タイ料理を頼んで「マイペッ(辛くしないで)」と言っても、辛かったことはないか。
あれは嫌がらせではない。タイ人の「辛くない」の基準と、日本人のそれが全く違うだけだ。
唐辛子の種類と辛さのレベル
タイで使われる唐辛子の代表は「プリックキーヌー(小さな青・赤唐辛子)」と「プリックチーファー(大きな緑・赤唐辛子)」だ。
プリックキーヌーはスコビル値が非常に高く(推定10〜100万SHU以上)、タイ語で「マウスドロップ唐辛子」を意味する。これを細かく刻んで料理に入れると、口全体に猛烈な辛さが広がる。
プリックチーファーは比較的マイルドで、カレーや炒め物の色づけに使われる。見た目は赤いが、辛さは控えめなことが多い。
「辛さの質」が違う
タイ料理の辛さには複数の「質」がある。
クンチアップ(エビのペースト)系:独特の発酵臭とともに来る辛さで、塩味との一体感がある。
グリーンカレー:ハーブと合わさったフレッシュな辛さで、レモングラスやコブミカンの皮の香りとセットになっている。
パッキーマオ(酔っ払いヌードル):ホーリーバジルとの組み合わせで、爽やかさと辛さが交互に来る。
ソムタム(青パパイヤのサラダ):酸味と一緒に来る辛さで、プリックキーヌーが粒のままドーンと入っていることが多い。
テーブルの調味料文化
タイの食堂テーブルには必ず調味料セットが置かれている。
砂糖・ナムプラー(魚醤)・プリックナムソム(酢漬け唐辛子)・プリックポン(唐辛子粉)の4点セット。これで各自が好みの味に調整する。
辛さを「後から足す」のがタイのスタイルで、最初から料理を最大限に辛くするのではなく、各自が調整できる設計になっている。「辛くないで」と言った料理でも、テーブルのプリックナムソムを自分でかければ辛くなる。
辛さへの慣れ方
「タイ料理を食べ続けると辛さに慣れる」というのは本当だ。
辛さへの耐性は訓練で上がる。毎日少しずつ辛いものを食べていると、2〜3ヶ月で「マイペッで頼んだのに辛い」という感覚がなくなることがある。
ただし「プリックキーヌーをそのまま一粒口に入れる」という試みは、最初は控えた方がいい。唐辛子に含まれるカプサイシンは消化器系を刺激するので、慣れない状態での過剰摂取はお腹の不調につながることがある。
「辛いものが得意になると」
タイ料理の辛さに慣れた人が言うのは、「辛さの奥にある味が見えてくる」だ。
辛さのインパクトが慣れで落ち着くと、その下にあるハーブの香り、ナムプラーの旨み、ライムの酸味が前に出てくる。タイ料理が「辛いだけ」から「複雑で豊か」に変わる瞬間がある。それが「タイ料理にハマる」タイミングだ。