タイの若者が変わっている——Gen Z世代の価値観と「親の世代との断絶」
タイのGen Z(1990年代後半〜2010年代生まれ)は親世代と異なる価値観を持ちつつある。LGBTQ+への開放性、王室への態度の変化、政治参加——社会変容の最前線にいる若者を通じてタイの現在地を読む。
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2020〜2021年のタイの若者デモは、世界のメディアが報じた。デモ隊は「3本の指を立てる」サルーサインを使い(映画ハンガーゲームの象徴)、政府批判だけでなく王室改革の要求を公の場で声に出した。
これは従来のタイ社会では考えられないことだった。不敬罪(刑法112条)が存在する国で、若者が王室に対して公に意見を言い始めた。
価値観の変化
SNS・英語教育・海外との接触——これらを通じて育ったタイのGen Z世代は、親世代とは異なる情報環境で価値観を形成してきた。
LGBTQ+への開放性は顕著だ。タイは元々「カトゥーイ(第三の性)」を社会に受け入れてきた文化的土台があるが、より若い世代では個人の性自認・パートナーシップを普通に議論する言葉が増えている。同性婚の法制化に向けた政治的な動きも、若者世代の声が後押しした面がある。
政治と若者
2020年の反政府デモは、学生・若者を中心に組織されたものだ。軍部・保守派・親王室層との対立構図が明確になった。
「親の世代は黙っていたが、自分たちは言う」という世代間の断絶が生まれた。ただし2021年以降、デモの勢いは政府の弾圧・逮捕・コロナによる集会制限で弱まった。変化が「完成した」わけではなく、「始まった」段階と言える方が正確だ。
在住外国人が感じる変化
バンコクの若いタイ人ビジネスパーソンやクリエイターと話すと、親世代が持っていた「権威への服従」とは異なる感覚を持っていることに気づく場面がある。
外国人スタッフに対しても「上司の指示には黙って従う」より「理由を説明してほしい」と感じる若者が増えているという声は、日系企業の人事担当者からも聞く。
タイは変わるのか
「タイは変わっている」と「タイは変わらない」の両方が同時に正しい状態にある。王室・軍部・保守的な社会規範は強固だ。一方で若い世代の意識は確実に変化している。
どちらが「タイの本当の姿」かではなく、その緊張関係の中で社会が動いていることを知っておくと、日々のタイ人との関係が少し立体的に見える。