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タイの教師の月給15,000バーツ——教育投資と教員待遇の逆説

タイの公立学校教師の初任給は約15,000THB(約6.5万円)。教育予算はASEAN最高水準なのに教員の給与が低い構造的矛盾を分析。国際学校との待遇格差、塾講師への流出、日本人教師の需要まで。

2026-05-31
教育教師給与国際学校公立学校

この記事の日本円換算は、1THB≒4.3円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(THB)の金額を基準にしてください。

タイの教育予算は国家予算の約20%を占め、ASEAN諸国の中で最も高い比率だ。しかし公立学校教師の初任給は約15,000THB(約6.5万円)。バンコクのコンドミニアムの家賃1ヶ月分にも足りない。予算の20%はどこに消えているのか。

予算と待遇の断絶

タイの教育予算の内訳を見ると、人件費が全体の60%以上を占める。一見すると教員に手厚いように見えるが、教員数が多すぎるのだ。生徒数が減少しても教員数は据え置き、結果として「薄く広く」配分される構造になっている。

加えて、予算の多くが「本省」と「県教育事務所」の行政コストに吸収される。教室に届くまでに何層もの中間組織を通過する間に、予算の実効性が薄まっていく。

国際学校との待遇格差

バンコクの国際学校の教師(外国人)の月給は80,000〜200,000THB(約34万〜86万円)。同じ「教師」という職業で、10倍以上の格差がある。

項目公立学校教師国際学校教師(外国人)
初任給15,000〜18,000THB80,000〜120,000THB
住居手当なしあり(15,000〜30,000THB/月)
年間授業日数200日180日
クラスサイズ40〜50人15〜25人

この格差は、タイの優秀な若者が教職を避ける一因になっている。

塾講師への流出

タイでは「スター塾講師」が社会現象になっている。人気講師はYouTubeやオンライン講座で月に数十万THBを稼ぐ。公立学校の教師をやめて塾講師になるケースが後を絶たない。

皮肉なことに、公立学校の授業が薄くなる → 塾の需要が増える → 優秀な教師が塾に流れる → 公立学校の授業がさらに薄くなる、という悪循環が生まれている。

在住日本人家庭への影響

この構造を理解すると、バンコク在住の日本人家庭が「公立は選択肢にならない」と判断する理由が見えてくる。年間学費100万〜300万円の国際学校を選ぶのは、贅沢ではなく、公教育の構造的な限界に対する合理的な反応だ。

日本語補習校や日本人学校という選択肢もあるが、いずれも学費は公立とは比較にならない。教育費はバンコク駐在の最大の固定費であり、赴任前に試算しておくべき数字だ。

一方で、タイの教育省は教員の修士号取得支援や給与体系の見直しを進めている。変化は遅いが、方向性は改善に向かっている。

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