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年1回の防空演習——台湾の「空襲警報」が日常に組み込まれている現実

台湾では毎年、全国規模の防空演習(萬安演習)が実施されます。30分間の交通停止、屋内退避の義務。在住外国人も対象となるこの演習の背景と実態を解説します。

2026-05-30
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年に1回、台湾の街が30分間止まる。車が路肩に寄せられ、歩行者は最寄りのビルか地下に入る。空にはサイレンが鳴り、テレビは特別放送に切り替わる。観光で来ていたら驚くが、在住者にとっては「ああ、今年もか」という行事だ。

萬安演習(ワンアンイェンシー)。正式名称は「軍民聯合防空演習」。台湾海峡を挟んだ安全保障環境を背景に、1978年から毎年実施されている。

演習の内容

演習は通常7月に実施される(年によって日程が異なる)。13:30〜14:00の30分間が一般的。

  1. 空襲警報(防空警報)が発令: テレビ・ラジオ・携帯のアラート(Cell Broadcast)で通知
  2. 車両は道路の右側に停車: エンジンを切り、車内で待機
  3. 歩行者は最寄りの建物・地下に退避: 屋外にいてはいけない
  4. 解除信号まで待機: 30分後に解除のサイレン

外国人も対象。知らずに歩いていると警察に注意され、屋内への退避を求められる。罰金の規定(3万〜15万TWD)はあるが、外国人に対して実際に適用されたケースは稀。

なぜ毎年やるのか

台湾と中国の関係は、1949年の国共内戦以来「未解決」のままだ。中国は台湾を自国の一部とする立場を崩しておらず、「必要ならば武力行使を排除しない」と繰り返し表明している。

2022年8月、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問後、中国は台湾周辺で大規模軍事演習を実施した。弾道ミサイルが台湾上空を通過し、一部は日本のEEZ内に着弾した。このレベルの緊張が、萬安演習を「形式的な行事」から「現実的な備え」に引き戻した。

在住者の受け止め方

台湾人の多くは演習を冷静に受け止めている。「中国が攻めてくる」と日常的にパニックになっている人はほぼいない。ただし、演習があるたびに「もし本当に起きたらどうするか」を一瞬だけ考える——その一瞬が、この演習の意義なのかもしれない。

在住日本人の間では、演習日を忘れてタクシーが捕まらなかった、外出中で慌ててコンビニに駆け込んだ、という話がよく聞かれる。

在住者として知っておくべきこと

  • 演習日は事前に告知される: 新聞・テレビ・自治体のウェブサイトで日程が公表される。前日までに確認しておくこと
  • 携帯にアラートが届く: 台湾のSIMを使っていればCell Broadcastで警報が届く
  • 演習中の外出は控える: 買い物・通院など時間をずらせる用事は午前中に済ませる
  • 地下鉄は通常運行: MRTは演習中も止まらない。駅構内にいれば問題ない
  • パスポートを持ち歩く: 万が一警察に声をかけられた際の身分証明として

台湾に住む以上、この地政学的リスクと同居することになる。演習はそのリスクを「見えるもの」にするための装置だ。

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