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台湾のエネルギー政策——脱原発と再エネ拡大の間で揺れる電力の現実

台湾のエネルギー政策の現状を解説。脱原発の方針と実際の進捗、再生可能エネルギー拡大の課題、停電リスクの現実、半導体産業の電力需要との矛盾、在住外国人が知っておくべき電力事情まで。

2026-04-21
エネルギー脱原発再生可能エネルギー電力環境

この記事の日本円換算は、1TWD≒4.8円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(TWD)の金額を基準にしてください。

台湾の電力事情は矛盾を抱えている。

2011年の福島第一原発事故を受けて、台湾は「脱原発」の方針を掲げた。2025年までに全原発を停止するという目標は政治的な意味を持ち、民進党政権のシンボル的政策でもあった。しかし同時に、台湾は世界最大の半導体製造拠点でもある。TSMCをはじめとするファブは、電力を大量に消費する。

脱炭素・脱原発・産業競争力——この三角形をどう解くかが、台湾のエネルギー問題の核心だ。

脱原発の現在地

台湾の原発政策は揺れ動いている。

2023年に最後の稼働原発(第三核電廠、恒春)の稼働延長問題が浮上した。当初の2025年全廃目標に対して、電力供給の安定性を理由に延長を主張する声が出た。台湾社会では原発を巡る世論が分かれており、2021年の国民投票では「反脱原発」(原発維持)の議案が否決されている。

現実の電力供給において、原発依存度は段階的に下がってきた。代替エネルギーとして液化天然ガス(LNG)火力発電の比率が高まっており、再生可能エネルギーの割合はまだ全体の20%程度にとどまる(2023年時点、推定)。

停電リスクの現実

2021年と2022年、台湾では大規模な停電が発生した。原因は発電所の計画外停止と急激な需要増の重なりだ。日本のニュースでも「台湾停電」として報道されたこの事態は、台湾の電力供給の脆弱性を浮き彫りにした。

在住外国人にとっての影響は、主に計画停電(輪流停電)への対処だ。事前に台湾電力の告知を確認し、UPSや手動での対応を考えておくことが現実的な備えになる。頻度は季節・状況による。

再エネ拡大の取り組みと課題

台湾政府は洋上風力発電の大規模な開発を推進している。台湾海峡の強風を利用した洋上ウィンドファームは、欧州の風力発電大手も参入しており、2030年代にかけて発電容量の拡大が計画されている。

太陽光については、農地・漁業場との複合(アグリソーラー)が模索されているが、台湾の狭い国土と農業政策との調整が課題だ。

在住者にとっての電気料金

台湾の電気料金は、家庭用は従量制の段階課金(累進制)。使用量が多いほど料金が上がる構造だ。

一般的な1LDK・エアコン使用込みで月TWD 800〜2,000(約3,840〜9,600円)程度が在住者の感覚値として語られることが多い。シンガポール・香港と比べると安い水準だ。

エネルギー問題は台湾の国内政治と産業戦略に直結しており、今後も変化が続く分野だ。在住・長期滞在を考えるなら、電力供給の安定性の動向を継続的に確認しておく価値がある。

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