エレベーターのない五階建てが安い理由——台湾の公寓に刻まれた時代の論理
台湾には階段だけの五階建て集合住宅(公寓)が多い。なぜ高さ五階で止まり、エレベーターがないのか。建築規制と時代背景から、台湾の住まいの構造を読み解く。
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台湾で部屋を探すと、必ず出くわすのが「公寓(ゴンユー)」と呼ばれる古い集合住宅だ。多くが五階建てで、エレベーターがない。同じ広さでも、エレベーター付きの新しいマンション(電梯大樓)より家賃や価格がはっきり安い。
なぜ五階で止まり、なぜエレベーターがないのか。この公寓という建物には、建てられた時代の論理が刻まれている。一棟の古いアパートから、台湾の住まいの歴史が読める。
「五階」には理由がある
台湾の古い公寓が五階建てに集中しているのは、偶然ではない。かつての建築規制で、一定の高さ以下の建物にはエレベーターの設置が義務づけられていなかった、という背景がある。
エレベーターを付けずに済む高さの上限が、おおむね五階あたりだった。だから建てる側は、コストのかかるエレベーターを避けつつ、できるだけ多くの戸数を確保しようと、ぎりぎりの五階建てにした。五階という高さは、規制とコストの妥協点だった。
階段だけという設計の代償
エレベーターがないことは、当時は問題視されにくかった。だが時が経ち、住民が高齢化すると、階段の上り下りが重い負担になる。五階まで荷物を持って上がるのは、若いうちはよくても、年を取るとこたえる。
この問題は、階によって人気と価格が変わる現象を生んだ。同じ建物でも、低層階は上りやすく人気が高く、最上階は敬遠されがちだ。エレベーターのない建物では、高さがそのまま不便さになる。階数が価値を左右する。
安さの正体
公寓が安いのは、古さとエレベーターのなさという二つの理由が大きい。設備が新しいマンションに比べて、快適性や利便性で劣る分、価格に反映される。
だが裏を返せば、立地が良くても手が届く価格、というメリットがある。都市の中心に近い公寓なら、利便性と安さを両立できる。階段の上り下りを許容できるなら、コストパフォーマンスは高い。何を妥協し、何を取るかの選択になる。
都市再開発という次の局面
老朽化した公寓は、耐震性の面でも課題を抱える。台湾は地震が多いため、古い建物の安全性は無視できない。そこで進んでいるのが、都市再開発(都市更新)だ。
古い公寓を取り壊し、エレベーター付きの新しい建物に建て替える動きがある。ただし住民の合意形成や費用負担の問題があり、簡単には進まない。古い公寓が立ち並ぶ街並みは、再開発の途上にある過渡期の風景でもある。
在住者の物件選び
部屋を探すとき、公寓か電梯大樓かは大きな分かれ目になる。安さと立地を取るなら公寓、快適さと将来を取るなら電梯大樓。自分の年齢、荷物の量、滞在期間で判断が変わる。
公寓を選ぶなら、何階かは慎重に見たい。二階と五階では、毎日の生活の負担がまるで違う。エレベーターのない五階建てが安い理由を知ると、その安さが何との引き換えなのかが見えてくる。一棟の古いアパートから、規制と時代と住み方の関係が読み解ける。そういう物件の見方もある。