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台湾のペットカフェと動物保護——殺処分ゼロ政策が変えた街の風景

台湾の猫カフェ・犬カフェ文化と動物保護の実態を解説。2017年の殺処分ゼロ政策、TNR活動、保護猫カフェの仕組み、台湾のペット飼育事情、在住者が知っておくべき動物関連の法律まで。

2026-05-07
ペット猫カフェ動物保護殺処分ゼロTNR

この記事の日本円換算は、1TWD≒4.8円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(TWD)の金額を基準にしてください。

台湾はアジアで初めて「犬猫の殺処分ゼロ」を法律で定めた国です。2017年に動物保護法が改正され、公立の動物収容施設での殺処分が禁止されました。日本がまだ年間約1万頭以上の犬猫を殺処分している(環境省、2023年度)のに対し、台湾は法律で完全にゼロにした。

この制度がどう機能しているのか、そして街中の猫カフェや犬カフェとどう繋がっているのか。

殺処分ゼロの仕組みと現実

法律で殺処分を禁止した結果、何が起きたか。収容施設が満杯になりました。

台湾の公立収容施設は、スペースの限界に達している施設が多い。殺処分ができないため、長期間にわたって動物を収容し続ける必要があり、施設の環境悪化が課題になっています。この問題に対処するため、台湾では「TNR(Trap-Neuter-Return)」——野良猫・犬を捕獲し、避妊去勢手術をして元の場所に戻す活動——が行政と民間の協力で進められています。

台北市内を歩いていると、耳の先端がV字にカットされた猫を見かけることがあります。これはTNR済みの印。手術を終えて地域に戻された猫たちです。

猫カフェの密度

台北は世界有数の「猫カフェ密度」を持つ都市です。特に有名なのが侯硐(ホウトン)——「猫村」として世界的に知られる小さな集落で、CNNが「世界6大猫スポット」に選んだことがあります。

市内にも猫カフェは多数あり、保護猫の里親募集を兼ねた「保護猫カフェ」も増えています。

タイプ入場料目安特徴
一般の猫カフェTWD 200〜400(約960〜1,920円、ドリンク込み)店の飼い猫と触れ合う
保護猫カフェTWD 150〜300(約720〜1,440円)里親募集中の猫がいる。気に入ったら譲渡申請可
犬カフェTWD 200〜500(約960〜2,400円)数は猫カフェより少ない

台湾のペット飼育事情

台湾のペット登録数は犬が約160万頭、猫が約90万頭(行政院農業部、2023年統計)。人口2,300万人の台湾で、ペット数は増加傾向にあります。少子化と連動して「子どもの代わりにペットを飼う」というトレンドは日本と同様です。

台湾の動物保護法は以下のような点でも厳格です。

  • マイクロチップの装着義務:犬は登録時にチップ埋め込みが必須
  • 虐待の厳罰化:動物虐待は最高TWD 750,000(約360万円)の罰金、最高2年の懲役
  • 繁殖業者の規制:ペットショップでの犬猫販売は登録制で、違法繁殖は罰則あり

在住者がペットを飼う場合

台湾でペットを飼う場合、賃貸住宅の「ペット可」物件は限定的です。台北市内の場合、ペット可の物件は全体の20〜30%程度。事前に大家との確認が必要です。

動物病院は台北市内だけで数百件あり、費用は日本と同程度か若干安い。一般的な診察料はTWD 300〜500(約1,440〜2,400円)、避妊去勢手術はTWD 2,000〜5,000(約9,600〜24,000円)程度です。

動物保護が映す社会の成熟度

殺処分ゼロ政策は完璧ではありません。収容施設の過密、TNRの追いつかない地域、非合法の繁殖業者など、課題は残っています。それでも、「殺さない」という法律を作り、社会全体でその負担を引き受けようとしている台湾の選択は、動物と人間の関係について考えさせられるものがあります。

台湾の街を歩いて、耳がカットされた猫を見かけたら——それは台湾社会が出した一つの答えの痕跡です。

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