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台湾の野球は「国球」だが、サッカー場より観客が少ない時代があった

台湾プロ野球(CPBL)は八百長スキャンダルで観客数が1試合2,000人台まで落ちた。そこからの復活劇は、台湾社会の縮図でもある。

2026-05-08
台湾野球CPBLスポーツ八百長國球

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台湾で野球は「國球(国の球技)」と呼ばれる。2024年のプレミア12(世界大会)では台湾代表が準優勝し、街中が興奮に包まれた。だが15年前、台湾プロ野球の観客数は1試合平均2,000〜3,000人にまで落ち込んでいた。

野球の導入: 日本統治時代

台湾に野球が入ったのは日本統治時代の1906年頃。日本人が台湾の学校に野球を持ち込み、1931年には嘉義農林学校(現・国立嘉義大学)が甲子園に出場して準優勝した。台湾原住民族のメンバーを含む混成チームで、映画『KANO』(2014年)の題材にもなっている。

戦後も野球は台湾に根づき、1968年には紅葉少年棒球隊がリトルリーグで活躍。1970年代〜80年代にかけて、台湾は少年野球の世界大会で数十回の優勝を重ねた。「野球=台湾の誇り」という構図はこの時期に形成された。

CPBL設立と八百長事件

台湾のプロ野球リーグ「中華職業棒球大聯盟(CPBL)」は1990年に設立された。初期は4球団でスタートし、1試合平均観客数は5,000〜8,000人。日本のNPBに比べれば小さいが、人口2,300万人の国としては健闘していた。

しかし、1996年から2009年にかけて4回の大規模な八百長スキャンダルが発覚した。選手・コーチ・球団関係者が暴力団から金を受け取り、試合結果を操作していた。最も衝撃的だったのは2009年の事件で、リーグ有数の人気球団だった中信鯨(China Trust Whales)が事件の影響で解散に追い込まれた。

観客数の底と復活

2009年前後の1試合平均観客数は約2,000〜3,000人。球場の大半が空席で、テレビ中継も減り、スポンサーが離れた。「CPBLは終わった」と言われた時期だ。

復活のきっかけは複数あるが、最大の要因は2013年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)だった。台湾代表が日本代表と接戦を演じ、国中が熱狂した。この大会をきっかけに、ファンが球場に戻り始めた。

その後、各球団がエンターテインメント化を推進した。チアリーディングチーム(「啦啦隊」)の人気が爆発し、SNSで球団のチアリーダーがインフルエンサー化。楽天モンキーズの「Rakuten Girls」は単独でファンイベントを開催するほどの人気を持つ。

2024年のCPBL平均観客数は1試合約8,000〜10,000人にまで回復した。

チアリーダー文化という独自進化

台湾プロ野球の最大の特徴は、チアリーダーの存在感だ。

日本のNPBにもチアリーダーはいるが、台湾のそれは規模と露出度が違う。試合中、スタンド前方のステージで常にパフォーマンスが行われ、球場の巨大スクリーンにチアリーダーが映し出される。SNSのフォロワー数が選手を超えているチアリーダーも珍しくない。

この構造は賛否がある。「野球を見に来ているのかチアを見に来ているのか」という議論はファンの間でも存在する。ただ、観客数の回復にチア文化が貢献したことは数字が示している。

台湾から日本プロ野球へ

台湾からNPBに渡った選手は少なくない。郭泰源(西武)、陽岱鋼(日本ハム→巨人)、王柏融(日本ハム)——台湾人にとって、NPBは「上位リーグ」であると同時に「自国選手の活躍を見る場」でもある。

台湾のスポーツバーやテレビでは日本のプロ野球が普通に中継されている。台湾に住む日本人が現地の友人と野球の話をすると、相手が日本の選手名やチーム事情を詳しく知っていて驚くことがある。

球場に行ってみる

CPBL観戦のチケットは安い。

席種価格日本円
外野自由席TWD 150〜200720〜960円
内野指定席TWD 350〜6001,680〜2,880円
VIP席TWD 800〜1,5003,840〜7,200円

台北では天母棒球場、新北では新莊棒球場が主要球場。台中のインターコンチネンタル球場は2万人収容の大型施設で、楽天モンキーズの本拠地だ。

チケットはコンビニ(全家FamilyMart / 7-ELEVEN)のibon端末で購入できる。当日券もほぼ確実に手に入る。

NPBの球場に慣れた目で台湾の球場を見ると、設備の差は感じる。だが観客の熱量、チアのパフォーマンス、球場飯の台湾料理——1,000円以下で味わえるライブ体験としては、かなり密度が高い。

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