エアコンを一晩中つけても怒られない家計——台湾の電気代を賃貸契約から読む
台湾の賃貸では電気代の請求方法が物件ごとに違い、大家が独自単価を設定するケースがある。夏の請求額が跳ね上がる仕組みと、契約時に確認すべき条項を実務的に整理する。
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台湾で部屋を借りた日本人が、夏に驚くことがある。家賃と別に届いた電気代の請求が、想像の倍だった、という話だ。使いすぎたわけではない。単価が違っていた。
台湾の賃貸物件、特にワンルームや間貸しの形式では、電力会社が直接各戸に請求するのではなく、大家がメーターを読んで独自の単価で請求する方式が使われることがある。この単価が、公式の料金体系より高く設定されている場合がある。
一戸に一つのメーターとは限らない
構造から説明する。台湾の古い建物では、一つの住戸を複数の部屋に分割して貸すことがある。この場合、電力会社の契約は建物全体または住戸単位で一本になり、各部屋には子メーターが付けられる。
子メーターは法定の計量器としての位置づけが、親メーターとは異なる。大家は親メーターの請求総額を、子メーターの数値で按分するか、あらかじめ決めた単価を掛けて各部屋に請求する。
この「あらかじめ決めた単価」が問題になる。台湾電力の家庭用料金は使用量に応じた段階制で、夏季は単価が上がる仕組みになっている。大家が高い段階の単価を全量に適用すれば、実際のコストより多く回収できる。
台湾では、この過大請求をめぐる指摘が繰り返し出ており、行政側も適正な請求について周知を行ってきた。ただ、実務では物件ごとに運用がばらつく。
契約前に確認する三点
内見と契約の段階で、確認しておきたいことがある。
ひとつめは、電気代の請求方式だ。台湾電力から直接請求が来るのか、大家が集計して請求するのか。直接請求なら、単価の心配はほぼない。大家経由なら、単価を書面で確認する。
ふたつめは、単価そのものの水準だ。台湾電力の公開している家庭用の料金表と比べて、著しく高くないか。契約書に「一度あたり◯元」と書かれていれば、そこが判断材料になる。書かれていない場合は、書き入れてもらう。
みっつめは、共用部の電気代の扱いだ。廊下や階段の照明、エレベーター、共用の給水ポンプ。これらが各戸に按分される場合、その按分方法を確認しておく。
賃貸借契約の標準的な様式は行政が公開しており、内政部の関連情報を参照できる。契約書に不明な条項があれば、署名前に説明を求めるのが基本だ。
夏の使用量が跳ねる理由
台湾の夏、特に7月から9月にかけては、エアコンの稼働時間が長い。夜間も気温が下がらず、湿度が高い。窓を開けても涼しくならない日が続く。
だから、電気代の月次の振れ幅が大きい。冬場と真夏で、数倍になることも珍しくない。この差が、単価の問題を目立たせる。冬は気にならなかった額が、夏に急に問題になる。
除湿機を併用する家庭も多く、これも消費電力に効く。台湾の湿度対策では、エアコンの除湿運転と、独立した除湿機のどちらを使うかで、電力消費が変わる。部屋の広さと目的で使い分ける人が多い。
節約の実務
具体的な打ち手はいくつかある。
エアコンの設定温度を下げすぎない。台湾の室内は、公共施設も含めてかなり低く冷やされることがあり、体感が麻痺しやすい。設定を一度上げるだけで、消費電力は目に見えて変わる。
インバーター式(変頻)かどうかを確認する。古い定速式のエアコンは、消費電力が大きい。賃貸物件のエアコンの型は選べないことが多いが、内見のときに見ておくと、夏のコストが予測できる。
サーキュレーターを併用する。空気を撹拌すると、設定温度が高くても体感が下がる。エアコン単体より効率がいい。
窓の断熱も効く。西日が強く入る部屋は、遮光カーテンやフィルムで負荷が変わる。台湾の建物は断熱性能が高くないことが多いので、この差は大きい。
物件選びの判断材料として
電気代の請求方式は、内見のときに聞きにくい項目かもしれない。だが、年間の居住コストで見ると無視できない差になる。
家賃が千元安い物件と、電気代の単価が適正な物件。夏の三ヶ月を計算に入れると、後者のほうが総額で安いことがある。表面の家賃だけで比較すると、この差が見えない。
台湾で長く住むつもりなら、電力会社から直接請求が来る物件を優先する、という基準を持っている在住者もいる。一戸に独立したメーターがあるかどうかは、建物の作りである程度分かる。
価格の透明性という論点
この話は、電気代だけの問題ではない。
大家が中間に入って料金を再請求する構造は、水道でも、ネット回線でも、管理費でも起こりうる。中間に一人入るたびに、価格の透明性は下がる。
集合住宅の管理が分散している台湾の住宅事情では、こういう中間層が生まれやすい。建物ごとに管理主体が違い、標準化された運用がない。便利さと引き換えに、条件のばらつきを個人が確認する必要が出てくる。
内見のときに確認したい項目は、電気代だけではない。四階や部屋番号が家賃に乗せている差も、遮音性能も、同じ一回の内見で見ておける。契約の全体像は住まい探しのガイドを参照してほしい。
契約書を読み込むのは面倒だが、その面倒さは、制度が標準化されていない分のコストを個人が引き受けている、ということでもある。台湾で部屋を借りるとき、契約書の電気代の項目を指差して質問する。その一手間が、夏の請求書の驚きを減らす。そういう備え方もできる。