アメリカの相続税と在住外国人の資産管理
アメリカに住む外国人は米国内の資産に対して連邦遺産税が課される場合があります。非居住外国人と居住外国人の違い、グリーンカード保有者の注意点、日米相続税条約の有無を解説します。
この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。
アメリカに住む日本人から、「相続についてほとんど考えていなかったが、いざ調べてみたら複雑だった」という話を聞くことがある。日本の相続税とアメリカの遺産税(Estate Tax)は制度が異なり、両国にまたがる資産を持つ在住者は二重課税のリスクを含め、早めに理解しておく必要がある。
アメリカの遺産税の基本
アメリカの連邦遺産税(Federal Estate Tax)は、亡くなった人の遺産総額が一定の控除額を超えた場合に課税される。
2026年1月時点での連邦遺産税の課税対象となる閾値(基礎控除)は、アメリカ市民・グリーンカード保有者(居住外国人)に対しては1,361万ドル(約21億円)以上の遺産に適用される(2017年税制改正後の水準。2025年末に期限を迎え、議会の対応によって変更の可能性がある点に注意)。
ただし、非居住外国人(Non-Resident Alien)の場合は控除額がわずか60,000ドル(約930万円)に減り、米国内に所在する資産に対して最高40%の税率が適用される可能性がある。
居住外国人と非居住外国人の違い
相続税の観点では、「居住外国人(Resident Alien)」と「非居住外国人(Non-Resident Alien)」の区別が重要だ。
居住外国人:グリーンカード保有者、またはIRSの「実質的存在テスト」(Substantial Presence Test)により米国居住者と判断された者。全世界の資産が課税対象になる可能性がある。
非居住外国人:一時就労ビザ(H-1B等)でアメリカに滞在し、IRSの基準で居住者と判定されない者。米国内に所在する資産(不動産・株式・銀行口座等)のみが対象。
「H-1Bビザで数年働いているが遺産税は関係ない」と思っていても、滞在年数・日数によっては居住者と判定されることがある。
日本とアメリカの二重課税リスク
日米間には「日米遺産・贈与税条約」が存在しない(2026年4月時点)。このため、アメリカで遺産税が課税された資産に対して、日本でも相続税が課税されるという二重課税のリスクが原則として存在する。日本の相続税には「外国税額控除」の制度があり、二重課税の全額解消はできなくても一定の緩和はある。ただし専門家(公認会計士・税理士)への相談なしに自己判断するのはリスクが高い。
グリーンカード保有者の注意点
グリーンカードを持つ日本人は連邦遺産税の観点では「居住外国人」扱いとなり、全世界資産が課税対象になる可能性がある。また、グリーンカードを持ったまま日本に帰国して相続が発生した場合、アメリカの税制上の居住者としての義務が残ることがある。「グリーンカードを返上すれば終わり」ではなく、資産額・タイミングによっては出国税(Expatriation Tax)が発生するケースもある。
実務的な対応
具体的な資産額・ビザ・滞在年数によってリスクは大きく異なる。アメリカで一定以上の資産を形成している、または日本に不動産・金融資産を保有している場合は、日米両国の税制を理解している国際税務の専門家(CPA・税理士)に相談する価値がある。
「自分には関係ない」ではなく、「今の状況だとどうなるか」を確認しておくのが長期在住者としての現実的な姿勢だ。