FBARとFATCA——アメリカ在住者が知るべき海外口座の申告義務
アメリカ在住者が日本の銀行口座を持つだけで発生するFBARとFATCAの申告義務。罰則・対象口座・申告方法を解説します。
この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。
日本に銀行口座を残したままアメリカに住んでいる人は多いと思います。しかしその口座残高が合計$10,000(約155万円)を超えた瞬間、アメリカ政府への申告義務が発生します。知らなかったでは済まされない——未申告の罰金は最大$100,000(約1,550万円)または口座残高の50%のいずれか大きい方です。
FBARとは何か
FBAR(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)は、米国財務省に対して海外金融口座の情報を報告する制度です。FinCEN Form 114として電子申告します。
申告義務が発生する条件:
- アメリカの税務上の居住者であること(グリーンカード保持者・H-1Bなどのビザ保持者を含む)
- 年間を通じて海外金融口座の合計残高が一度でも$10,000を超えたこと
ここで注意すべきは「合計」という点です。日本のA銀行に$6,000、B銀行に$5,000あれば、合計$11,000で申告対象になります。
申告期限: 毎年4月15日(自動延長で10月15日まで)
FATCAとは何か
FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)は2010年に成立した法律で、FBARとは別の制度です。IRS(内国歳入庁)に対してForm 8938で申告します。
申告基準(アメリカ国内居住者・独身の場合):
- 年末時点の海外金融資産が$50,000超、または年間を通じて$75,000超
FBARより基準が高いため、FBARの対象だがFATCAの対象ではないケースは多いです。逆にFATCA対象ならほぼ確実にFBARも対象になります。
FBARとFATCAの違い
| 項目 | FBAR | FATCA |
|---|---|---|
| 提出先 | FinCEN(財務省) | IRS(内国歳入庁) |
| フォーム | FinCEN Form 114 | Form 8938 |
| 基準額 | 合計$10,000超 | $50,000超(独身・国内居住) |
| 提出方法 | BSA E-Filingで電子申告 | 確定申告(Form 1040)に添付 |
| 罰則(故意でない場合) | 最大$10,000/口座/年 | 最大$10,000 |
| 罰則(故意の場合) | 最大$100,000 or 残高の50% | 最大$50,000 |
対象になる「金融口座」の範囲
銀行の普通預金・定期預金だけではありません。
- 日本の銀行口座(普通・定期・外貨預金)
- 証券口座(株式・投資信託・NISAを含む)
- 生命保険の解約返戻金がある商品
- 年金口座(iDeCoなど。ただし国民年金・厚生年金は対象外とされる見解が有力)
日本のNISA口座も対象です。アメリカの税務上、NISAの非課税メリットは認められず、NISA内の運用益はアメリカで課税されます。
在住日本人が陥りやすいパターン
パターン1:日本の口座を「放置」している 渡米前に開設した口座にまとまった残高がある。使っていないから申告不要だと思っている——これは誤りです。残高があるだけで申告義務は発生します。
パターン2:日本の年金や保険を見落としている iDeCoや積立型の生命保険など、「金融口座」の定義に入るものを認識していない。
パターン3:為替変動で基準を超える 円安でドル換算した残高が$10,000を超えるケースがあります。FBARの換算レートは財務省が公表する年末レートを使用します。
未申告に気づいたら
過去の未申告に気づいた場合、IRS(内国歳入庁)が提供する自主開示プログラムがあります。
- Streamlined Filing Compliance Procedures:故意でない未申告者向け。過去3年分の修正申告と6年分のFBARを提出する。アメリカ国内居住者の場合、5%のペナルティが課される
- Delinquent FBAR Submission Procedures:FBARのみ未提出で、税金の未納がない場合に利用可能。ペナルティなしで遡及提出できる可能性がある
いずれにしても、国際税務に詳しいCPA(公認会計士)またはEA(IRS認定税理士)への相談が現実的な選択肢です。日系のCPAファームはロサンゼルス・ニューヨーク・サンフランシスコに複数あります。
まとめ:最低限やるべきこと
- 日本に金融口座がある場合、年間の合計残高が$10,000を超えるかどうかを確認する
- 超える場合は毎年4月15日までにFBAR(FinCEN Form 114)を電子申告する
- $50,000を超える場合はFATCA(Form 8938)も確定申告に添付する
- 過去の未申告がある場合は、自主開示プログラムの利用を検討する
アメリカの税制は「全世界所得課税」——世界中どこに資産があっても申告対象です。日本の口座を「忘れていた」では済まないことを、早めに認識しておく必要があります。