グリーンカード抽選(DV Lottery)——日本人は対象外。それでも永住権を目指す方法
DV Lottery(グリーンカード抽選)は日本人が対象外であることを知らない人が多い。日本人がアメリカ永住権を取る現実的なルートと、帰化の条件、日本国籍喪失の問題を整理する。
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毎年世界中で数百万人が応募するDV Lottery(Diversity Visa Lottery / 多様性ビザ抽選)。正式名称はDiversity Immigrant Visa Programといい、当選すれば永住権(グリーンカード)が手に入る。しかし日本人にこの選択肢はない。最初からそう設計されているためだ。
なぜ日本人は対象外なのか
DV Lotteryの趣旨は「移民の多様性を確保する」こと。過去5年間でアメリカへの移民を50,000人以上送り出している国は対象から除外される。
日本がその基準を超えているかというと、実はそうとも言えない。除外される「高移民送出国」は中国・インド・メキシコ・フィリピン・韓国・キューバ・エルサルバドル・ドミニカ共和国・ベトナム・ブラジルなど。日本は例年この除外国には入らないケースが多い。
では日本人が応募できるかというと——実は応募自体は可能な年度もあった。ただし当選確率は非常に低く、毎年の除外国リストの変動もある。国務省のDV Lottery公式サイトで毎年の対象国を確認する必要がある。
**重要なのは、DV Lotteryだけを永住権の主なルートとして考えるのは現実的でないということだ。**年間の選出者数は約55,000人で、全世界から数百万人が応募するため、当選は偶然に近い。日本からの応募者が当選するには普通の意味での「運」に頼ることになる。
日本人が現実的に永住権を取るルート
EB-1:優先労働者(雇用主スポンサー不要のルートも)
EB-1Aは「卓越した能力(Extraordinary Ability)」保有者向けで、雇用主スポンサーなしに自分で申請できる唯一のカテゴリに近い。
判断基準は「重要な賞または10種類の証拠基準のうち3つ以上を満たすこと」。証拠例は学術論文の被引用数、業界での高い給与、審査員・審査員資格、主要メディアでの報道等。ノーベル賞やアカデミー賞レベルでないと無理というわけではなく、専門分野で上位の実績があれば申請に値するケースは存在する。
EB-2 NIW:国家利益免除
NIW(National Interest Waiver)はEB-2カテゴリの特例で、雇用主スポンサーなしに申請できる。「アメリカの国家利益に資する活動を行う能力と実績がある」ことを示す必要がある。
研究者、医師、工学系の専門家などが活用するルートで、2017年の審査基準改定以降は柔軟な運用がされている。申請書類の準備に時間はかかるが、弁護士費用は雇用主スポンサーを使う通常ケースより安く抑えられることが多い。
EB-3:専門職・技術職
雇用主スポンサーが必要だが、学士以上の専門職(Professionals)または2年以上の経験が必要な技術職(Skilled Workers)が対象。
PERM(Labor Condition Application:労働市場テスト)をパスした後にペティションを提出する必要がある。日本出身者の場合、優先日の待ち時間はインド・中国出身者より短いことが多い。
EB-5:投資家移民
最低$800,000(ターゲット雇用地区 / Targeted Employment Area)または$1,050,000の投資と、10人以上の雇用創出が条件。Regional Center(投資先仲介機関)を通じて投資するパターンと、自分でビジネスを作るパターンがある。
出身国による優先日の差が小さく、インド・中国出身者にとっても人気が高い。ただし投資リスクは当然にある。Regional Centerが詐欺まがいの案件を抱えて問題になった事例もある。投資先の精査は必須だ。
家族呼び寄せ(Family-Based Immigration)
アメリカ市民または永住権保持者の配偶者・親・子を通じたルート。アメリカ市民の配偶者は「即時相対者(Immediate Relative)」として優先日なしに申請できるため最も早い。
日本人がアメリカ市民と結婚するケースは毎年一定数ある。配偶者ビザ(IR-1/CR-1)での入国後、条件付き永住権(2年間)→永住権という流れになる。
グリーンカードのメリット・デメリット
グリーンカードを取得すると何が変わるのか。
メリット:
- 就職先・雇用主を自由に選べる(H-1Bのスポンサー縛りがなくなる)
- レイオフされても60日のカウントダウンが始まらない
- 社会保障番号(SSN)と年金積立が本格的に機能する
- 大学のIn-State学費が適用されるケースも(州による)
デメリット:
- FBARとFATCの申告義務は市民権と同じく発生する
- グリーンカード維持には年間183日以上アメリカに居住する必要がある(長期帰国に制限)
- アメリカを2年以上離れる場合は「Reentry Permit(再入国許可)」が必要
帰化(市民権取得)の条件
永住権取得後5年間(配偶者経由の場合は3年間)アメリカに住み続け、一定の語学・歴史知識テスト(Naturalization Test)に合格すると、市民権申請ができる。
問題は日本国籍を失うこと。日本は二重国籍を原則認めていない。アメリカ市民権取得時に「外国の国籍を放棄する誓い(Oath of Allegiance)」をするため、日本の国籍は失われる。日本への帰国・就労・不動産取得等において影響が出る。
年間3,000〜4,000件程度の日本人がアメリカ市民権を取得しているとされるが、日本国籍喪失の影響を十分に理解した上での決断が必要だ。
永住権を持ちつつ市民権を取らない「永遠の永住者」という選択肢もある。フライトの自由度や帰国のしやすさを優先するなら、グリーンカードを維持しながら日本国籍を保つ道がある。
参考: 米国務省「Diversity Visa Program」公式ページ、USCIS「EB-1 Extraordinary Ability」、USCIS「EB-5 Immigrant Investor Program」、外務省「二重国籍問題」、USCIS「Naturalization」