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H-1Bビザ抽選——IT系就労ビザの仕組みと日本人が直面する現実

アメリカで働くIT・専門職の日本人に必須のH-1Bビザ。年間65,000枠に対して30万件超の申請が殺到する抽選制度の仕組みと、落選した際の現実的な代替ルートを解説。

2026-04-29
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この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。

アメリカのIT系企業から内定を取った。あとはビザだけ——と思ったとき、「H-1B抽選に外れる可能性が60%以上ある」という現実を知ることになる。これがH-1Bビザの問題だ。能力や採用ポジションとは無関係に、くじ引きで決まる。

H-1Bビザの概要

H-1Bビザは「専門職(Specialty Occupation)」向けの就労ビザで、学士以上の学歴と、それに関連する専門的な仕事(IT、エンジニアリング、医療、会計、建築等)が条件だ。

有効期間は3年(延長で最大6年)。雇用主がスポンサーとなって申請するため、「自分でビザを申請する」ことはできない。

年間発行上限:

  • 通常枠:65,000件
  • 修士以上(Advanced Degree)枠:20,000件
  • 合計:約85,000件(特定の大学・非営利研究機関は上限外)

抽選の現実

USCISに登録される申請件数は2021年以降、毎年20〜30万件超。2024年度(FY2024)の登録数は約780,000件(電子登録ベース)に達した。

単純計算で、通常枠65,000件に対して約65万〜78万件の登録があれば、当選確率は約10〜15%程度になる。修士枠を含めても1回の抽選で通過できる確率は年によって異なるが、「半分以下」が長年の実態だ。

3月に登録、4月に抽選結果、10月1日から勤務開始(FY開始)というスケジュールになっている。

日本人が有利な点と不利な点

有利な点

  • 日米友好通商航海条約(Treaty of Friendship, Commerce and Navigation)に基づく「E-1/E-2ビザ」は日本人に利用可能。日本企業がアメリカ法人を持っている場合、その子会社への出向という形でE-1ビザを取得する選択肢がある

不利な点

  • H-1Bの抽選は国籍問わず全員対象。「インド・中国出身者の申請が多い」という競争構造は日本人にとっても不変
  • OPT(学生ビザ卒業後の就労期間)を使い切った後にH-1Bに外れると、在米継続が困難になる

H-1Bに外れた場合の現実的な選択肢

1. 翌年の抽選に再挑戦(OPT延長) STEM分野の学位保持者はOPT(Optional Practical Training)を最大3年延長できる。この間に再度H-1B抽選を受ける。

2. L-1ビザ(社内転勤) 日本の本社で1年以上勤務後、アメリカ子会社に転勤する形で申請できる。抽選なし。ただし同一グループ企業への転勤が前提。

3. O-1ビザ(卓越した能力) 「卓越した能力・実績」を持つ個人向け。論文・受賞・メディア掲載等の実績が必要。IT系では高い評価を受けているが、申請要件のハードルが高い。

4. カナダ経由 カナダで就労ビザ(Work Permit)を取得し、アメリカとの国境管理協定(TN Visa等、これはメキシコ・カナダ国民向け)は日本人に適用されないが、カナダからアメリカのO-1やE-3申請を試みるケースもある。

5. 国外のアメリカ企業拠点で勤務 一部の大手テック企業はカナダ・アイルランド・シンガポール等に雇用拠点を持ち、H-1B難民(H-1B lottery losers)を受け入れる採用を行っている。

抽選制度の行方

H-1Bの抽選制度は長年改革が議論されてきたが、2026年現在も基本的な抽選制度は維持されている。ウェイジ(賃金)ベースの優先制への転換案は複数回提案されているが、実現していない。

アメリカでの就労を軸にキャリア計画を立てる場合、「H-1Bに頼らない経路」をバックアップとして持つことが現実的なリスクヘッジになる。

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