ITINの取得と確定申告——SSNがない人のためのアメリカ納税ガイド
アメリカでSSN(社会保障番号)がない人のための納税者番号ITIN。取得手順、確定申告での使い方、よくある間違いをまとめます。
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アメリカで収入がある人は、市民権や在留資格に関係なく確定申告の義務があります。しかしSSN(Social Security Number)を取得できない人——例えばSSN発行対象外のビザ保持者や、その配偶者——はどうするのか。答えがITIN(Individual Taxpayer Identification Number)です。
ITINとは何か
ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)は、IRS(Internal Revenue Service=内国歳入庁)が発行する9桁の納税者番号です。SSNを取得する資格がない人が、連邦税の申告・納付を行うために使います。
番号の形式は「9XX-XX-XXXX」。SSN(XXX-XX-XXXX)と似ていますが、最初の桁が必ず「9」で始まり、4桁目と5桁目の組み合わせで区別されます。
ITINでできること:
- 連邦税の確定申告(Form 1040等)
- 銀行口座の開設(一部の銀行)
- 州の運転免許取得(一部の州)
ITINではできないこと:
- 就労許可の証明(ITINは就労資格を与えない)
- Social Securityの給付を受ける
- EIC(勤労所得税額控除)の適用(2024年時点)
誰がITINを必要とするのか
典型的なケースは以下の通りです。
- Hビザ保持者の配偶者(H-4ビザ): 就労許可(EAD)がない場合、SSNが取得できない。しかし夫婦合算申告(Married Filing Jointly)をするにはITINが必要
- Fビザ(学生ビザ)保持者の配偶者: 同上
- 不動産所得がある非居住者: アメリカに不動産を持つが、居住していない外国人
- 投資所得がある非居住者: 配当・利子等の米国源泉所得がある人
日本人で最も多いのは、駐在員の配偶者です。夫がLビザ、妻がL-2ビザでEADを取得していない場合、妻のITINが合算申告に必要になります。
ITIN取得の手順
ITINの申請はForm W-7をIRSに提出して行います。
Step 1: Form W-7の記入
IRSのウェブサイト(irs.gov)からW-7フォームをダウンロード。氏名、住所、出生国、パスポート情報を記入します。
Step 2: 本人確認書類の準備
パスポート(原本またはIRS認定公証人による認証コピー)が最も確実な書類です。パスポートだけで身分証明と外国籍の証明の両方を満たせます。
Step 3: 確定申告書と同時に提出
ここが重要なポイントです。W-7は原則として確定申告書(Form 1040等)と一緒に提出します。「ITINを取得してから申告する」のではなく、「申告と同時にITINを申請する」という順序です。
提出先はIRS Austin Processing Center(テキサス州オースティン)。郵送で送ります。
Step 4: 審査・発行
処理期間は通常7〜11週間。繁忙期(1月〜4月の確定申告シーズン)はさらに長くなることがあります。
よくある間違い
間違い1: パスポート原本を郵送してしまう
パスポート原本を送ると、審査期間中は手元にパスポートがなくなります。出国予定がある場合は非常に困る。代替策として、IRS認定のCertifying Acceptance Agent(CAA)を通じて申請すれば、パスポート原本を郵送せずに済みます。CAAは会計事務所や税理士事務所が認定を受けていることが多い。
間違い2: ITINの更新を忘れる
ITINは3年間使用しないと失効します。また、2013年以前に発行されたITINは既に失効しています。失効したITINで申告すると処理が遅れるため、事前にForm W-7で更新申請が必要です。
間違い3: ITINで就労できると思い込む
ITIN取得は就労許可を意味しません。雇用主がITINを受け入れてW-2を発行するケースもありますが、就労資格の有無とは別の問題です。
確定申告の基本
ITINを使って確定申告する場合、申告書の種類は在留ステータスによります。
| ステータス | 申告書 |
|---|---|
| 居住者(Resident Alien) | Form 1040 |
| 非居住者(Nonresident Alien) | Form 1040-NR |
| 居住・非居住の両方(Dual-Status) | Form 1040 + Form 1040-NR |
「居住者」の判定は、183日テスト(Substantial Presence Test)またはグリーンカードテストで決まります。暦年で183日以上アメリカに滞在していれば、通常は居住者扱いです。
日米租税条約の活用
日本国籍者には日米租税条約の適用があります。特に重要なのは以下の条項です。
- 利子所得: 一定条件下で源泉税が10%に軽減(通常30%)
- 配当所得: 条約により10%に軽減
- 年金: 居住地国のみで課税(条約第18条)
租税条約の恩恵を受けるには、Form 8833(Treaty-Based Return Position Disclosure)の提出が必要です。この書類を出し忘れると条約適用が認められないケースがあります。
確定申告は毎年4月15日が期限ですが、海外居住者は自動的に6月15日まで延長されます(Form 4868を出せばさらに10月15日まで延長可能)。ただし、延長されるのは申告期限であり、納税の期限は4月15日のままです。延長期間中の未納税額には利息がかかります。