年間パス$80で63の国立公園に入れる——アメリカの国立公園システムが「安い」理由
アメリカの国立公園制度を解説。年間パスの仕組み、人気の公園、入園料の構造、キャンプ場予約の実態、在住日本人の活用法まで。
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アメリカには63の国立公園がある。グランドキャニオン、ヨセミテ、イエローストーン、ザイオン——名前を聞いたことがある場所ばかりだ。この63公園全てに1年間何度でも入れるパスが$80(約12,400円)。1公園あたり$1.27。日本の国立公園は入園料が基本無料だが、アメリカの国立公園はスケールが違うので比較にならない。
America the Beautiful Pass
年間パスの正式名称は「America the Beautiful — The National Parks and Federal Recreational Lands Annual Pass」。$80で国立公園だけでなく、国有林(National Forest)、国立野生動物保護区(National Wildlife Refuge)、BLM管理地など、連邦政府が管理する2,000以上のレクリエーションエリアに入場できる。
1台の車に乗っている全員に適用される(1車両あたり)ので、家族4人で行っても$80。1回の入園料が$35の公園もあるので、3回行けば元が取れる。
入園料の構造
年間パスなしの場合、国立公園の入園料は公園によって異なる。
| 公園 | 1車両あたり入園料 | 有効期間 |
|---|---|---|
| グランドキャニオン | $35(約5,425円) | 7日間 |
| ヨセミテ | $35(約5,425円) | 7日間 |
| イエローストーン | $35(約5,425円) | 7日間 |
| ザイオン | $35(約5,425円) | 7日間 |
| アカディア | $35(約5,425円) | 7日間 |
| 無料の公園(約100か所) | $0 | — |
2024年時点で入園料を徴収する公園は約110か所。残りの公園・レクリエーションエリアは無料。入園料は全額が公園の維持管理費に充てられる。
人気公園の予約制
近年、人気のある国立公園は予約制(タイムドエントリー)を導入している。
ヨセミテ国立公園は夏季(5〜9月)に車両の事前予約が必要。グレイシャー国立公園のGoing-to-the-Sun Roadも夏季は予約制。予約はrecreation.govのサイトで開始日に一斉に取り合いになる。
夏休み(6〜8月)の週末はどの人気公園も満員だ。狙い目は春(4〜5月)と秋(9〜10月)の平日。気候も穏やかで、人も少ない。
キャンプ場
国立公園内のキャンプ場は$15〜$35/泊(約2,325〜5,425円)。ヨセミテのカリービレッジやイエローストーンのマディソン・キャンプ場は半年前に予約が埋まる。
予約が取れなくてもFirst-Come, First-Served(先着順)のサイトがある公園もある。ただし夏のハイシーズンは朝10時にはチェックアウト待ちの車が列を作っている。
RV(キャンピングカー)で来る家族も多い。フルフックアップ(電源・水道・排水接続)のRVサイトは$35〜$60/泊。アメリカの国立公園はRV文化と密接に結びついている。
在住日本人の楽しみ方
アメリカ在住の日本人にとって、国立公園は最高の週末旅行先だ。西海岸ならヨセミテ・セコイア・デスバレーがドライブ圏内。東海岸ならシェナンドー・アカディアが日帰り〜1泊で行ける。
年間パスを買って、3連休や長期休暇のたびに公園を回る。子どものいる家庭にはJunior Rangerプログラムがある。ビジターセンターで冊子をもらい、自然観察や質問に答えるとレンジャーからバッジがもらえる。全公園で実施しており、子どもが夢中になる。
なぜ「安い」のか
$80という価格設定は、国立公園を「裕福な人だけの場所にしない」という政策的意思の表れでもある。国立公園の設立理念は「国民全員のための公園(for the benefit and enjoyment of the people)」。入園料を上げすぎると低所得層が排除される。
軍人・退役軍人は無料パスがもらえる。4年生(小学4年生)は無料パスが配布される。62歳以上は生涯パスが$80。この価格設計自体が、アメリカの国立公園が持つ思想を反映している。