ポートランド——「住みやすい都市」の現実とホームレス問題
かつて「アメリカで最も住みやすい都市」に挙げられたポートランド。しかし2020年代以降、ホームレス問題・犯罪増加・企業流出が続く。在住者が見る現在のポートランドを整理する。
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ポートランドはかつて「ヒップな都市」の代名詞だった。ファーマーズマーケット、自転車文化、コーヒーショップ、食文化の多様性——「Portlandia」というコメディドラマにもなったほどそのカルチャーは固有のものだった。
2020年以降、そのイメージは揺らいでいる。
何が起きたか
2020年のジョージ・フロイド事件後、ポートランドは全米で最も激しい抗議デモが続いた都市の一つになった。その後、公共の場でのドラッグ使用を事実上合法化したオレゴン州法(措置110号、2021年施行)の影響もあり、ホームレスの増加と薬物使用が市内各所で可視化されるようになった。
措置110号は2024年に廃止されたが、その影響の整理には時間がかかっている。ダウンタウンのパウエル・ブックス(世界最大の独立系書店の一つ)周辺や、パール・ディストリクトのような以前は賑やかだった地区でも、空き店舗が目立つようになった。
住宅費と生活コスト
その分、住宅費は下がった。2021〜2022年に比べ、ポートランドのレント相場は2024年時点でやや落ち着いている。1LDKのアパートで月1,200〜1,800USD(18.6万〜27.9万円)程度が中心価格帯だ。シアトルやサンフランシスコよりはるかに安い。
オレゴン州には州所得税があるが、消費税がゼロだ。日用品・衣料品の買い物では消費税なしで計算できる——これは実生活での地味なコスト削減になる。
「住みやすい」は今も部分的に本当
ダウンタウンを避ければ、ポートランドの生活は依然として良い面が多い。北東部(NE Portland)や南東部(SE Portland)の住宅地は、公園・カフェ・レストランが徒歩圏内に揃い、コミュニティの密度が高い。
自転車インフラは全米トップクラスで、自転車通勤を選択している在住者は多い。自然へのアクセスも近く、マウント・フッド(車で1.5時間)、コロンビア渓谷(45分)、海岸(90分)——週末のアクティビティには不自由しない。
日本人コミュニティ
ポートランドの日系コミュニティは歴史が深い。日米文化会館(Japanese American Historical Plaza)、日本文化センターなどの施設がある。ただし在住日本人の数はシアトルやサンフランシスコより少なく、日本語サービスの選択肢は限られる。
ポートランドを選ぶ日本人の多くは、IT・クリエイティブ系のリモートワーカーか、料理・アート・アウトドアに関わる仕事をしている人が多い印象だ。都市の「ブランドイメージの低下」と実生活のギャップを冷静に見極めた上で判断する価値はある。
問題があることは事実だ。それでも「どこに住むか」は個人の優先順位次第で、ポートランドが合う人には今でも合う街だ。