「赤い州」「青い州」——政治的分断をアメリカ在住外国人が感じる瞬間
アメリカの政治的分断(赤い州・青い州)を在住外国人の日常体験から解説。州ごとの法律の違い、職場での政治談義、選挙シーズンの空気感まで実態をレポート。
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アメリカに住んで最初の驚きのひとつが、政治の話題がいかに日常的かということだ。日本では「政治と宗教の話は避ける」という空気がある。アメリカでは、バーで初対面の人と政治の話を始めることが普通に起きる。
そしてその会話が、どちらの「色」の州に住んでいるかで、まったく違う展開になる。
「赤」と「青」の地図
選挙結果を色で塗り分けた地図は、アメリカの政治的地形を視覚化する。共和党(Republican)が優勢な州を「赤い州(Red State)」、民主党(Democrat)が優勢な州を「青い州(Blue State)」と呼ぶ慣習だ。
テキサス・フロリダ・アラバマ・ユタ——赤い州の代表格。 カリフォルニア・ニューヨーク・マサチューセッツ・ワシントン——青い州の代表格。 「スウィングステート(揺れる州)」と呼ばれるペンシルベニア・ミシガン・アリゾナなどは選挙のたびに注目される。
州法が変わると「別の国」
在住外国人として実感するのは、州ごとに法律が大きく異なることだ。これは「政治的分断」の最も具体的な現れだ。
銃規制: カリフォルニアはアメリカ国内で最も厳しい銃規制を持つ。テキサスはオープンキャリー(公開携帯)が認められている。同じ国の中で、銃に関する権利と制限がまったく異なる。
大麻合法化: コロラドは2012年に大麻を嗜好品として合法化した先駆け。現在は20以上の州で嗜好品使用が合法。一方、連邦法では依然として違法だという矛盾がある。
中絶: 2022年の最高裁判決(Dobbs判決)以降、各州が独自の中絶法を制定した。一部の州は厳しく制限、別の州は広く許容している。
在住者として「どの州に住むか」はライフスタイルと価値観に直結する。同じ「アメリカ」でも、暮らしの自由度が州によって大きく変わる。
職場での政治談義
アメリカの職場では「政治の話はしない」という不文律がある職場もあれば、まったくない職場もある。
テック業界・学術機関・メディア——民主党寄りとされる業界では、政治的な発言がオープンになされることがある。一方で「私は共和党支持だ」と言いにくい空気を感じる人もいる。逆に中西部の製造業・農業地域では、リベラルな発言が場を凍りつかせることがある。
外国人として政治的な議論に加わるべきか。「どちら側も正しい部分と間違っている部分がある」という立場を保つのが現実的だ。どちらかに強く共鳴した発言をすると、反対側の人々との関係に影響する。
選挙シーズンの空気
大統領選挙の年(4年ごと)には、アメリカ社会全体が選挙一色になる。街角の看板、テレビの大半が選挙広告、SNSの投稿——どこにいても政治から逃げられない時期が続く。
選挙後しばらくは「どちらが勝ったか」によって、街全体の空気が変わる。喜びと怒りが同時に街に満ちる瞬間を、在住外国人として目撃することになる。それがアメリカという場所の、ひとつのリアルだ。