高層ビルの隣で竹の足場——ベトナムの建設現場が映す二重経済
ベトナムの建設現場では最新の高層ビルと竹・木の足場が共存する。ハイテクとローテクが同じ街に並ぶ理由を、発展途上経済の二重構造として読み解く。
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ベトナムの都市を歩くと、不思議な光景に出会います。ガラス張りの最新オフィスビルがそびえる一方で、すぐ近くの工事現場では竹や木を組んだ足場が使われている。最先端と昔ながらの手法が、同じ街区に同居している。この共存は無秩序ではなく、発展途上の経済が抱える二重構造をそのまま映しています。
二つの速度が同居する
急成長する経済では、すべての分野が同じ速度で近代化するわけではありません。外資が入る大規模開発は最新技術を使う一方、地元の小規模工事は安価で手に入る方法を選びます。竹や木の足場は安く、調達しやすく、扱える職人がいる。だから残る。
経済は均一に進歩するのではなく、まだら模様で進みます。ハイテクとローテクが地理的にも産業的にも隣り合う。この「まだら」こそ、移行期の経済の特徴です。
ローテクは劣っているのか
竹の足場を「遅れている」と見るのは一面的です。竹は軽く、しなり、補修しやすい。熟練した職人が組めば、特定の現場では金属より小回りが利くこともあります。素材としての竹には、再生可能で安価という強みがある。
技術の優劣は、文脈次第です。資本が潤沢で大規模なら金属の既製足場が合理的。資本が限られ小規模なら竹が合理的。どちらが優れているかではなく、どの条件にどちらが合うか、という問題です。
労働の厚みが支える
竹足場が成り立つのは、それを扱える人手があるからです。手作業に従事する労働力が豊富で、人件費が相対的に安い。機械化のインセンティブが、まだそれほど強くない。
経済が成熟し人件費が上がると、手作業は機械に置き換わっていきます。今ベトナムで見られる竹の足場は、ある意味で時代の途中の風景です。数十年後には、こうした光景が観光写真の中だけのものになっているかもしれません。
移行期の街を読む
最新ビルと竹足場が並ぶ風景は、ベトナム経済の現在地を一枚で示しています。すでに到達した高みと、まだ残る手作業の世界。その両方が同じフレームに収まっている。
この二重性は、いずれ片方に収束していくのでしょう。だからこそ今、その共存を見ておく価値があります。竹の足場は、消えゆく時代のしるしであり、移行期のベトナムを観察する手がかりでもあります。