漢字が復活している——ベトナムの書道・漢字復興運動の意味
ベトナムはかつて漢字(チュノム)文化圏だったが、20世紀にアルファベット表記(クオックグー)に移行した。今、若い世代の間で書道や漢字への関心が再び高まっている。
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旧正月(テト)前になると、ハノイの旧市街に書道師が現れ、漢字(チュノム)や漢字系の文字で縁起の良い言葉を書いた紙を売る。
「Phúc(福)」「Lộc(禄)」「Thọ(寿)」——これらの文字は、今のベトナム人の多くが読めない文字だ。それでも、縁起物として求められる。
ベトナムの文字の歴史
ベトナムはかつて漢字文化圏だった。中国の影響下で漢字が使われ、独自の漢字系文字「チュノム(Chữ Nôm)」も発達した。
20世紀初頭、フランス植民地時代に普及したのが現在のベトナム語表記「クオックグー(Quốc ngữ)」——ローマ字を基にした声調記号付きのアルファベット表記だ。この表記は普及率が高く、識字率向上に貢献した。現代のベトナム人はクオックグーで読み書きをする。
チュノムを読める人が激減した
チュノムは20世紀にほぼ日常使用されなくなり、今では専門の研究者・学者・一部の僧侶を除いて読める人はほとんどいない(推定)。
古い寺院の碑文・歴史的文書・民間の伝承文書——これらはチュノムで書かれており、現代のベトナム人には「読めない自国の文化遺産」として存在している。
書道復興の動き
近年、若い世代の間でチュノムや漢字への関心が高まっている。
背景のひとつは「ルーツへの関心」だ。経済成長とともに「自分たちの文化とは何か」を問い直す動きが生まれている。書道の体験教室、漢字デザインのファッション、テトの縁起書の需要が増えている。
「読めないけれど、美しいと思う」という感覚が、若者を書道に引き寄せている。
日本との共通項
日本も漢字を使う文化圏として、この「漢字の美しさ」という感覚を共有している。ベトナムで「日本語が書いてあるTシャツ」が流行することがあるように、「意味はわからなくても美しいデザイン」としての文字への感覚は相互に作用している。
「文字の意味」と「文字の美」を切り離して捉える視点は、グローバル化の中で文化が移動する時代の、ひとつのあり方だ。