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カントー——メコンデルタの都市と水上マーケット

ベトナム南部メコンデルタの中心都市カントー。早朝の水上マーケット、水路を行き交う生活、ホーチミンとは異なるゆったりとした都市の空気を在住者の視点からレポートします。

2026-04-22
カントーメコンデルタ水上マーケットベトナム南部観光

この記事の日本円換算は、1VND≒0.006円で計算しています(2026年4月時点)。

ホーチミンからバスで3〜4時間南西に走ると、景色が変わる。高層ビルが消え、水路が増え、バイクの代わりにボートが移動手段になる地域に入る。メコンデルタ——東南アジア最大の農業地帯の中心に、カントーという都市がある。

人口約120万人(2024年時点)。ベトナム南部デルタ地方最大の都市であり、コメ・果物・水産物の一大集積地だ。ホーチミンのような喧騒はないが、それがカントーの本質でもある。

水上マーケット、カイランに朝5時に向かう

カントーの象徴はカイラン水上マーケット(Chợ nổi Cái Răng)だ。カントー市街から南東約7km、カイラン水路に浮かぶ市場で、売り手も買い手もボートに乗って取引する。野菜・果物・魚介類が積み上がったボートが水路を埋め尽くし、売り物の種類を竿の先に吊るして広告代わりにする「bẹo」と呼ばれる慣習が独特だ。

早朝5〜7時がピーク。8時を過ぎると急速に人が減る。ツアーボートに乗ると往復で200,000〜300,000VND(1,200〜1,800円)程度。個人でボートを探せば半額近くになることもある。

ただ、訪れる前に知っておきたいことがある。カイランは現在、往時ほど賑わっていない。若い世代が陸上のスーパーマーケットや市場に移行し、水上マーケットで生計を立てる人が減っている。今見られるのは「生きた市場」と「観光地化された市場」が混在した姿だ。それでも、早朝に水路を行き交うボートの音と湿った空気は、ほかの場所では体験できない。

カントーの日常——水路が道路

カントーの市街地を歩くと、あちこちに水路がある。橋を渡るたびに視界が開け、木造ボートが係留されているのが見える。住民は水路沿いの細長い住宅(nhà ống)に暮らし、バイクと水上交通を使い分ける。

食事の相場はホーチミンとほぼ同等かやや安め。フォーやコム・タム(砕き米)が1食30,000〜60,000VND(180〜360円)。魚料理や川エビを使った料理が豊富で、メコンデルタならではの食材が手に入りやすい。バインセオ(ベトナム風クレープ)の専門店が多いのもこの地域の特徴だ。

ホーチミンとの違い

カントーに数日滞在すると、ホーチミンとの空気の違いを感じる。バイクのクラクションが少ない。店員の対応がゆっくりしている。路地を歩いても「外国人を急かす」感じがない。南部デルタ地方の人柄を「おっとりしている」と評するベトナム人自身も多い。

外国人在住者は少ない。英語が通じる場面が限られるため、ある程度ベトナム語ができると生活の幅が広がる。在住日本人コミュニティもほぼなく、完全に地元に溶け込む形の生活になる。

周辺への起点として

カントーはメコンデルタ観光の起点になる。ビントゥアン省のアルガン椰子群生地、チャビン省のクメール文化が残る仏教寺院、ドンタップ省のサギのコロニーなど、日帰りか一泊で回れる場所が多い。

ホーチミンから週末に訪れる拠点としても、しばらく滞在して南部の農村生活を体験する場所としても使える。観光地化しすぎず、かといって不便すぎない——そのバランスがカントーの居心地のよさかもしれない。


メコンデルタを知りたいなら、まずカントーへ。水路の上で一日が始まり、果物の香りと川の泥臭さが混じる空気の中で、ベトナムの農業地帯の呼吸を感じられる場所だ。

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