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ベトナムのキャッシュレス化は「銀行を飛ばして」進んでいる

MoMoとZaloPayが牽引するベトナムのキャッシュレス革命。銀行口座普及率が低いまま、モバイル決済が浸透するリープフロッグ現象の構造と、在住日本人の使い方を解説する。

2026-05-07
ベトナムキャッシュレスMoMoZaloPayフィンテック

この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。

ベトナムの屋台でバインミーを買う。50,000VND(約330円)。財布を出そうとしたら、おばさんがスマホの画面を見せてきた。QRコードだ。

5年前なら現金一択だったこの場面が変わった。ベトナムのキャッシュレス化は、想像以上の速度で進んでいる。

銀行口座なしでも決済できる

ベトナムのキャッシュレス化が面白いのは、銀行口座の普及率が先進国より低いまま、モバイル決済が広がっている点だ。

世界銀行のGlobal Findex(2021年)によれば、ベトナムの成人の銀行口座保有率は約31%。日本の98%と比べると圧倒的に低い。ところがスマートフォン普及率は70%を超えている。この「銀行口座はないがスマホはある」という層が、電子ウォレットに直接チャージして決済する。銀行のインフラを飛び越えた「リープフロッグ」だ。

アフリカのケニアでM-Pesaが銀行を飛ばしてモバイル送金を普及させた構造と、根本的に同じことが起きている。

MoMoとZaloPay

ベトナムの電子ウォレット市場を牽引するのは、MoMo(モモ)とZaloPay(ザロペイ)の二強だ。

MoMo。 2014年設立。ユーザー数は3,000万人以上(2024年時点の公表値)。送金、電気代・水道代の支払い、携帯電話のチャージ、映画チケットの購入、飲食店の支払い——生活のほぼ全てをMoMoで完結させるユーザーが増えている。UIは洗練されており、ベトナム語が読めなくても直感的に使える。

ZaloPay。 メッセージアプリZalo(ベトナム版LINE)の決済機能。Zaloのユーザー基盤(7,000万人以上)を活かし、「友達に送金」の導線が強い。割り勘機能や、グループへの一斉送金が特徴。

ほかにもVNPay(銀行系QRコード決済)、ShopeePay(ECプラットフォーム連動)、ViettelPay(通信キャリア系)があるが、日常決済の現場ではMoMoとZaloPayの存在感が圧倒的だ。

QRコードが覆った風景

ホーチミンやハノイを歩くと、路上の屋台から高級レストランまで、どこにでもQRコードのステッカーが貼られている。バイクタクシーの運転手もQRコードを持っている。お寺の賽銭箱にQRコードが貼られているケースすらある。

政府の後押しも大きい。ベトナム国家銀行(中央銀行)は2020年代に入ってキャッシュレス推進政策を強化し、2025年までにキャッシュレス決済比率を大幅に引き上げる目標を掲げた。VNPayの銀行間QRコード決済の統一規格が浸透し、異なる銀行口座間でもQRコードで即時送金ができる。

在住日本人の使い方

外国人がMoMoやZaloPayを使うには、ベトナムの電話番号(SIMカード)と、ベトナムの銀行口座またはビザ/マスターカードの紐付けが必要だ。

ステップ1: ベトナムのSIMカードを購入する(Viettel、Mobifone、Vinaphoneなど。空港で50,000〜100,000VNDで購入可能)。

ステップ2: MoMoアプリをダウンロードし、電話番号で登録する。

ステップ3: ベトナムの銀行口座(Vietcombank、Techcombank等)を開設し、アプリに紐付ける。または国際クレジットカードで直接チャージする。

ステップ4: 本人確認(KYC)を完了する。パスポートの写真とセルフィーが必要。

一度セットアップすれば、コンビニ、スーパー、タクシー、水道電気代の支払い、友人との割り勘がすべてスマホ1台で完結する。

ただし注意点もある。地方都市や農村部ではまだ現金主導で、電子ウォレットが使えない場面がある。完全キャッシュレス生活はホーチミンとハノイの中心部に限られると考えた方がいい。

現金が消えない理由

急速にキャッシュレス化が進んでいるとはいえ、ベトナムの決済はまだ現金主導だ。流通現金の総量は減っていない。

理由はいくつかある。高齢者のデジタルリテラシー、農村部のインフラ不足、そして「グレー経済」の存在だ。ベトナムのインフォーマル経済(非公式経済)は GDP の相当な割合を占めるとされ、この部分は電子化すると課税対象になるため、現金が選好される。

キャッシュレス化は「便利だから進む」だけではなく、「管理できるから政府が推す」という側面もある。テクノロジーの普及と国家の管理能力の強化は、表裏一体だ。ベトナムのキャッシュレス化を見るとき、この二面性を意識しておくと、見え方が少し変わる。


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