エアコンをつけた月だけ電気代が跳ねる——ベトナムの段階制料金と節約の考え方
ベトナムの家庭用電気料金は使用量が増えるほど単価が上がる段階制。請求書の読み方、大家経由の請求で注意すべき点、そして家賃以外に毎月出ていく費目の比べ方を整理する。
この記事の日本円換算は、1USD≒161円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、USDまたは現地通貨(VND)の金額を基準にしてください。
ベトナムで暮らし始めて数か月経つと、電気代の請求額が月によって不自然に大きく動くことに気づきます。使用量が2倍になった月に、請求額が2倍より大きく増えている。
計算ミスではありません。ベトナムの家庭用電気料金が、使用量に応じて単価が上がる段階制(累進制)を採っているためです。
使うほど単価が上がる
多くの国の電気料金は、基本料金と従量料金の組み合わせで、従量部分の単価は一定です。ベトナムの家庭用は複数の使用量帯に区切られ、上の帯に入るほど1kWhあたりの単価が高くなる設計になっています。
つまり、最初の数十kWhは安い単価で計算され、そこを超えた分はより高い単価で計算される。日本の所得税の累進課税と同じ考え方です。
この結果、使用量が増えたときに請求額は比例以上に増えます。「エアコンを使っただけなのに」という体感が生まれるのは、この非線形性のためです。
なお、料金の区分や単価は改定されることがあります。具体的な数字は電力会社(EVN)の公式発表や請求書で、その時点のものを確認してください。
何が使用量を押し上げるか
家庭で最も電力を食うのは、多くの場合エアコンです。特に日中も在宅で仕事をする人は、稼働時間が長くなるぶん請求額の変動が大きくなります。
次いで、温水器(給湯器)。ベトナムの浴室には電気温水器が付いていることが多く、常時通電のまま使っている家庭も少なくありません。使う前だけ入れる運用にすると差が出ます。
冷蔵庫と洗濯機は常時または定期の稼働ですが、単体では季節変動が小さい。つまり、月ごとの請求額の揺れはほぼエアコンと温水器で説明できます。
賃貸で最も注意すべきこと
在住者にとっての実務的な要点は、料金そのものより「誰から請求されるか」です。
パターンは大きく三つあります。電力会社と直接契約して請求書が自分に来る。大家がメーターを読んで実費を請求する。大家が独自の単価を設定して請求する。
三つ目の場合、公式の単価より高い設定になっていることがあります。契約前に「1kWhいくらか」「電力会社の請求書を見せてもらえるか」を確認しておくと、後の不信を避けられます。請求書の実物を見せてもらえるなら、それが一番早い。
サービスアパートやコンドミニアムでは、管理会社が一括で契約して各戸に配分する形も多い。この場合も配分方法を確認しておく価値があります。
家賃だけで部屋を比べない
電気代の話が実務的に効いてくるのは、部屋を比較する場面です。ベトナムの賃貸では、家賃に含まれない費目が日本より多い。管理費(サービス費)が別建てなのが基本で、共用部の清掃・警備・エレベーターの維持に充てられます。面積単位で計算する建物と、戸別定額の建物があり、前者では広い部屋に移ると管理費も比例して上がる。
水道は建物一括で戸数割りにするところ、メーターで実測するところ、家賃込みのところが混在します。インターネットは備え付けの回線が含まれる物件と自分で契約する物件がある。バイクを持つなら駐輪費が台数ごとにかかり、家族で複数台になると無視できません。
内見のたびに、家賃・管理費・電気の課金方法・水道・ネット・駐輪の6項目をメモする。これを3件分並べると、家賃が一番安い部屋が総額でも一番安いとは限らないことがはっきりします。詳しい契約の進め方は賃貸契約のガイドにまとめてあります。
メーターを自分で読む
最も確実なのは、自分でメーターの数字を月に一度記録することです。スマートフォンで写真を撮って日付とともに残しておけば、請求額と使用量の関係を自分で検証できる。
数か月分たまると、自分の家の消費パターンが見えてきます。エアコンの設定温度を1度上げた月と下げた月で、どのくらい差が出るか。実測すると、体感より効果が大きいことも小さいこともある。
これは省エネの話というより、生活費の予測可能性の話です。毎月の支出が読めるようになると、家計の設計が楽になります。
支払い方法
多くの家庭で、銀行アプリや電子ウォレットからの支払いが使われています。顧客番号を登録しておけば、請求のたびに数タップで完了する。
大家経由で払う場合は、送金メモに検針月を書き込んでおく。金額が月ごとにばらつく費目ほど、後から履歴を見返したときに「どの月の分か」が書いてあるかどうかで検証の手間が変わります。
自動引き落としを設定できる場合もありますが、金額を確認しないまま払い続けることになるので、月に一度は請求額を見る習慣にしておいたほうがいい。異常値に気づけるかどうかは、見ているかどうかで決まります。
節約の優先順位
段階制の下では、使用量を上の帯から押し下げるほど単価も下がるため、削減の効果が二重に効きます。減らした分の電力量と、単価の低下の両方が請求額に反映される。
現実的に効くのは、エアコンの運転時間を減らすこと、設定温度を極端に下げないこと、使わない部屋の温水器を切ること。この三つで大半が説明できます。
扇風機との併用も、体感温度を下げる手段としては効率がいい。空気を動かすことで同じ室温でも涼しく感じられるため、設定温度を上げても快適さが保てます。
数字を見て、動かせる変数を一つずつ試す。ベトナムの電気代は、生活の実験としてはよくできた題材です。