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ベトナムで一番見かける外国企業は、日本企業ではなく韓国企業だった

サムスン、ロッテ、ヒュンダイ——ベトナムのFDI(海外直接投資)で韓国が日本を逆転した構造と、現地の日韓プレゼンスの違いを分析する。

2026-05-17
ベトナム韓国FDIサムスン日韓比較

この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。

ホーチミンの繁華街を歩く。ロッテリアがある。ロッテマートがある。サムスンのショールームがある。CGVシネマズがある。ヒュンダイの車が走っている。

日本人駐在員がベトナムに着いて最初に感じる違和感のひとつは、「韓国企業の存在感が日本企業より大きい」ということだ。

数字で見る日韓の差

ベトナム計画投資省の統計によれば、累積FDI(海外直接投資)の登録額で韓国は長年ベトナムへの最大の投資国のひとつだ。日本も上位に位置するが、2010年代後半から韓国が日本を上回る年が続いている。

象徴的なのはサムスンだ。サムスンのベトナムへの投資額は累計で約$200億(約3.1兆円)に達し、ベトナムの全輸出額の約4分の1をサムスン製品が占めるとされる。ベトナムの貿易黒字はサムスンなしでは赤字に転落するという試算すらある。

一国の企業がホスト国の貿易収支を左右するほどの影響力を持つ。これはFDIの教科書にはなかなか出てこない構造だ。

なぜ韓国企業はベトナムを選んだか

韓国企業がベトナムに集中投資した理由は、中国リスクの回避(チャイナ・プラスワン)だけではない。

労働コスト。 ベトナムの最低賃金は月約$230〜240(約35,600〜37,200円、第1地域・2024年7月改定)で、中国の沿海部の半分以下。韓国企業にとっては製造コストの大幅な削減になる。

地理的近接性。 ソウルからハノイまで約4時間半。時差は2時間。東京からの5〜6時間とほぼ同等だが、韓国企業の方がベトナムへの人員派遣のハードルが低い。

文化的親和性。 儒教文化圏で年功序列の意識が似ている。韓流(K-POP、韓国ドラマ)の浸透でベトナムの若者が韓国に好意的。韓国語を学ぶベトナム人も増えている。

日本企業の立ち位置

日本企業がベトナムに存在感がないわけではない。イオン、ファミリーマート、ミニストップ、ユニクロ、無印良品、トヨタ、ホンダ——消費者向けのブランドも進出している。

しかし韓国企業と比べると投資の規模とスピードで差がある。日本企業は意思決定に時間がかかり、リスクを段階的に取る傾向がある。韓国企業(特に財閥系)はトップダウンで数千億円規模の投資を一気に実行する。

在住日本人からよく聞くのは「韓国人コミュニティの方が大きく、韓国語の看板が目立つ」という感想だ。ホーチミンの7区(フーミーフン)は韓国人居住者が多く、韓国食材店、韓国語の美容室、韓国式チムジルバン(スパ)が集まるエリアになっている。

Kポップと「ソフトパワーの差」

韓国企業がベトナムで成功している背景に、韓流コンテンツの浸透がある。ベトナムの若者がBTSを聴き、韓国ドラマを見て、韓国コスメを使う。この「ソフトパワー」が韓国企業の進出を後押ししている。

日本のアニメ・マンガもベトナムでは人気だが、消費財の購買行動に直結する度合いでは韓流の方が上だという見方が一般的だ。ドラマの主人公が使っているコスメがそのまま売れる——この導線はアニメには生まれにくい。

「日本ブランド」の立ち位置

ベトナムで「日本製」は依然として品質のシグナルだ。「Made in Japan」のステッカーが貼られた家電は、同スペックの韓国製品より高い価格で売れる。日本車は韓国車より信頼されている。

しかし「品質が高い」と「存在感がある」は別の話だ。品質で勝っても、スピードと規模で負ければ市場でのシェアは取れない。ベトナムの消費市場で韓国企業が先行しているのは、投資のスピード、現地化の速さ、そしてソフトパワーの3つが揃っているからだ。

ベトナムで暮らすと、日本の「ゆっくり確実に」というアプローチの長所と短所が、隣国との対比でくっきり見える。


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