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冠水した部屋の家財は誰が払うか——ベトナムで借主が備えておく保険と記録

ベトナムでは台風・豪雨による浸水や停電が珍しくない。賃貸に住む在住者が家財と自分をどう守るか、保険の考え方と実務的な備えを整理する。

2026-09-29
保険台風賃貸ベトナム

この記事の日本円換算は、1USD≒161円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、USDまたは現地通貨(VND)の金額を基準にしてください。

9月から11月にかけて、ベトナムの中部を中心に台風が接近する時期が来ます。豪雨で道路が冠水し、停電が起き、低層階の部屋に水が入る。毎年どこかで起きていることです。

そのとき、濡れた家財の費用を誰が負担するのか。契約書に書かれていないことが多い項目です。

建物と家財は別のもの

まず整理しておくべき区別があります。建物そのものの損害と、部屋の中にある物の損害は別に扱われます。

建物の保険は、原則として所有者、つまり大家や管理組合が掛けるものです。壁が壊れた、配管が破損した、といった損害はこちらの範囲になります。

一方、部屋の中にある自分の持ち物は、借主の資産です。ノートパソコン、カメラ、衣類、家具。これらが濡れて使えなくなった場合、建物の保険では通常カバーされません。

つまり、借主が自分で手当てする必要がある領域が存在する。ここが空白になっている在住者は多い。

どんな保険が考えられるか

選択肢はいくつかあります。

ひとつは、駐在員向けの海外赴任者保険です。医療の補償が中心ですが、契約内容によっては携行品や家財に関する補償が含まれる場合があります。会社が一括で加入している場合、証券の現物を取り寄せて自分で読む。「入っているはず」で止まっている人が多い部分です。

もうひとつは、現地の保険会社が提供する家財保険です。ベトナムでも各社が個人向けの商品を扱っており、加入は可能です。ただし約款がベトナム語である場合が多く、補償範囲の確認には注意が要ります。

商品の内容と条件は会社ごとに異なり、変更もされます。具体的な補償を検討する場合は、その時点で保険会社や代理店に直接確認してください。

補償されないことが多い項目

一般論として、水災の扱いは保険商品によって差が大きい領域です。地域の災害リスクに応じて、免責になっていたり、別の特約になっていたりする。

「保険に入っているから大丈夫」ではなく、「その保険で水災はカバーされているか」を確認する。これは日本でも同じですが、災害の頻度が高い地域ではより切実になります。

また、屋外に置いていた物、たとえばベランダの物品やバイクは、別の扱いになることがあります。バイクについては車両保険の対象になるかどうかを、購入時に確認しておくのが確実です。

保険より先にやること

正直なところ、保険の手配より効果が高い備えがあります。

物を高い位置に置くこと。低層階に住んでいるなら、重要な書類と電子機器を床から離す。これだけで、浸水時の被害の大半は防げます。

パスポート、在留に関わる書類、契約書。これらは防水性のあるケースに入れ、高い場所に置く。加えて、全ページをスキャンしてクラウドに保存しておく。原本が濡れても、再発行の手続きが格段に楽になります。

同じ保管方法が雨季の湿気とカビにも効きます。床に近い引き出しは、浸水しなくても湿度が高い。書類と電子機器を床から離すという一つの動作で、二つのリスクが同時に下がります。

停電への備えも同様です。モバイルバッテリー、懐中電灯、飲料水。数日分あれば、たいていの状況は乗り切れます。

記録を残す習慣

万一被害が出たとき、補償を受けるにも、大家と交渉するにも、記録が必要になります。

入居時に部屋の状態を撮影しておく。所有している高額な物品は、購入時のレシートを保管しておく。被害が出たら、片付ける前に撮影する。

この三つは、どれも数分で済む作業です。そして、必要になったときにはもう遡ってできない作業でもあります。

大家との事前の合意

契約時に確認しておきたいのは、水漏れや浸水が起きたときの修繕の分担です。建物側の設備に起因する問題なのか、借主の使用に起因する問題なのか。

線引きが曖昧なまま入居すると、実際に起きたときに交渉になります。契約書に条項があるかを見て、なければ口頭でも確認して、やりとりをメッセージで残しておく。文字で残っているかどうかで、後の展開が変わります。

住む場所の選択そのもの

最も根本的な対策は、冠水しにくい場所と階を選ぶことです。ホーチミン市の排水と冠水の構造を知っておくと、どの地区が繰り返し水に浸かるかの見当がつきます。

内見のときに、周辺の道路の排水を見る。近隣の人に、雨季にこのあたりが冠水するかを聞く。過去に浸水した建物には、壁の一定の高さに水の跡が横一線に残っていることがあります。エントランスの内側や駐輪スペースの壁を、しゃがんで見てみる。

路地の奥まった住所は、この点で不利になりやすい。大通りから離れるほど排水の優先順位が下がり、水が引くまでの時間が延びます。

低層階は便利で安い。そのぶんリスクを引き受けている。この交換条件を認識したうえで選ぶなら、それは合理的な判断です。知らずに選んでいるなら、9月の雨が来る前に一度考え直す価値があります。

台風の予報が出たら、窓を閉め、物を上げ、水と電池を確認する。この30分の作業が、後の数週間を左右します。

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