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ベトナム人はなぜ金(ゴールド)で貯金するのか——VND不信の歴史と金価格プレミアム

ベトナムでは不動産と並んで金(ゴールド)が主要な資産保全手段。VNDの減価歴史、SJC金の国際相場との乖離、外国人が知るべきベトナムの金融構造を解説。

2026-05-29
ゴールド貯蓄VND資産

この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。

ベトナム人の家庭にはタンスの中に金の延べ棒がある——これは冗談ではない。ベトナムでは「tích vàng」(金を蓄える)が世代を超えた資産保全の常識だ。

世界金協会(World Gold Council)によると、ベトナムは東南アジア最大の金消費国の一つ。人口約1億人の国で、年間約55〜60トンの金が消費されている。

VND不信の歴史

ベトナムドン(VND)は過去30年で対USDで大きく減価した。1994年に1USD=11,000VND前後だったレートは、2024年には1USD=25,000VND前後。通貨価値が半分以下になった。

1980年代のハイパーインフレ(年率700%超)を経験した世代にとって、通貨を信じることは難しい。銀行に預けても金利がインフレに追いつかない時期があった。だから金を買う。金はVNDが下がっても価値を保つ。

SJC金と国際相場の乖離

ベトナムの金市場で最も信頼されているのがSJC(Saigon Jewelry Company)ブランドの金塊だ。SJC金は国際金相場より20〜30%高い「ベトナムプレミアム」が付いている。

2024年には国際金相場が1オンス$2,400前後のとき、SJC金の1両(tael、約37.5g)の価格がVND 90,000,000(約$3,600)を超えた。国際相場換算では$2,900相当——プレミアムが$500以上ある計算だ。

このプレミアムは、ベトナム政府が金の輸入を厳しく規制していることから生じている。供給が制限されているため、国内需要が国際価格を上回る。

不動産と金の二大資産

ベトナム人の資産ポートフォリオは、大きく分けて「不動産」と「金」だ。株式投資はまだ一般的ではなく、VN-Indexの個人投資家比率は高いが、資産全体に占める割合は限定的。

不動産は固定資産で流動性が低い。金は換金性が高く、緊急時にすぐ現金化できる。この「いつでも売れる」安心感が、ベトナム人の金選好の核心にある。

在越日本人への影響

ベトナムで生活費をVND建てで保有するリスクは、日本円やUSD建ての資産と比べて高い。駐在員は通常、給与の一部を日本の口座に振り込んでいるが、現地採用の日本人はVND建ての収入だけになることが多い。

Wiseやリクルート送金(SBIレミット等)で定期的に日本に送金するか、ドル建ての預金をベトナムの銀行で持つ(外貨預金口座は開設可能)ことで、VNDの減価リスクをヘッジできる。

金をベトナムで購入して日本に持ち帰ることは法的に可能だが、税関申告が必要($5,000相当以上)。ベトナム国内での金売買には10%のVAT(付加価値税)がかかる点も考慮が必要だ。

ベトナム人の同僚やパートナーが「お金の話」をするとき、その背景にはVNDに対する世代を超えた不信感がある。この文脈を理解しておくと、ベトナム社会の見え方が変わる。

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