ホーチミンのストリートコーヒー文化——プラスチック椅子で飲む「カフェ・スア・ダー」の世界
ベトナムのコーヒー文化は世界第2位の生産国にふさわしい深さを持つ。路上のプラスチック椅子・カフェスア・エッグコーヒーの仕組み・値段・作り方を在住者視点で解説。
この記事の日本円換算は、1VND≒0.006円で計算しています(2026年4月時点)。
ホーチミンの路上では、プラスチックの低い椅子に腰かけてコーヒーを飲む人の姿をいたるところで見る。歩道の端・バイクの脇・軒下——どこでもコーヒーが飲まれている。
ベトナムはコーヒー生産量で世界第2位(ブラジルに次ぐ、出典:ICO 国際コーヒー機関)。この生産量がそのまま生活に染み込んでいる。
カフェスアダー(Cà phê sữa đá)とは
ベトナムコーヒーの代表格がカフェスアダーだ。
- Cà phê: コーヒー
- sữa: ミルク(コンデンスミルク)
- đá: 氷
金属製のフィルター(ベトナム式ドリッパー、phin)でゆっくり落としたコーヒーに、コンデンスミルクと大量の氷を入れて飲む。
特徴は「濃さ」と「甘さ」だ。豆はロブスタ種が主体で、アラビカ種より苦味・コクが強い。コンデンスミルクの甘さと合わさって、独自の味になる。
路上の屋台価格: 15,000〜30,000VND(90〜180円) カフェ店内価格: 30,000〜60,000VND(180〜360円) スターバックス等チェーン: 60,000〜95,000VND(360〜570円)
路上コーヒーとスタバの価格差は3〜6倍だ。
ブラックアイスコーヒー(カフェダー)
砂糖なし・ミルクなしのブラックアイスコーヒー。ロブスタのコクが直接来る味で、コーヒーに慣れた人には「ベトナムコーヒーの素顔」がここにある。
「甘いのが苦手」な場合は「カフェダー(Cà phê đá)」または「カフェデン(Cà phê đen)」と言うと、砂糖・ミルクなしのブラックが出てくる。
エッグコーヒー(Cà phê trứng)
ハノイ発祥のコーヒー。卵黄・砂糖・コンデンスミルクを泡立てたクリームをコーヒーの上に乗せる。マシュマロのような甘さとコーヒーの苦さが層になる独特の飲み物だ。
ハノイでは1940年代に誕生したとされる(出典:ベトナム観光局)。ホーチミンにも提供する店があるが、ハノイの老舗(Giang Café等)で飲むのが本来の形とされる。
ホーチミンのコーヒー文化と時間
ホーチミン市内のコーヒー屋は早朝5〜6時から開く。朝の通勤前にバインミーとコーヒーを屋台で済ませる人が多く、路上にプラスチック椅子が整然と並ぶ光景が朝7時に成立している。
昼前後はオフィス街で人が増え、夕方〜夜はカフェで長時間過ごすベトナム人の姿が目立つ。WiFi・電源付きのカフェは「場所を借りる」感覚で利用される。
在住者の使い方
毎朝の路上コーヒー(15,000〜25,000VND)が生活のリズムになる在住外国人は多い。言語が通じなくても「カフェスアダー」と指差しで注文は通じる。
地元感を体験したいなら、椅子の高さが膝くらいの路上屋台が一番正直な場所だ。エアコンが効いたスタバとは別の「ホーチミンの時間」がそこにある。