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ニャチャンは「ベトナムのハワイ」ではない。ロシア語が飛び交うリゾートの正体

ベトナム随一のビーチリゾート・ニャチャンは、日本人が想像する南国リゾートとは異なる街になっている。ロシア人・中国人観光客が主役のこの街の構造を読み解く。

2026-05-07
ベトナムニャチャンリゾート観光不動産

この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。

ニャチャンの看板は、半分がロシア語で書かれている。

カインホア省の省都であるニャチャンは、人口約50万人のビーチリゾート都市だ。7kmの白砂ビーチ、年間平均気温26度、乾季が長い。条件だけ見れば「ベトナムのハワイ」と呼びたくなる。実際にそう紹介する記事もある。しかし現地に行くと、その比喩がまったく的外れだとわかる。

ロシア語の街

2010年代半ば以降、ニャチャンはロシア人観光客の最大の受け皿になった。ベトナムがロシア国民にビザなし入国(15日間)を認めていること、直行便の存在、物価の安さが重なった。コロナ前の2019年には、ニャチャン空港(カムラン国際空港)の国際線利用者のうちロシア人が最大のシェアを占めていた。

ビーチ沿いのレストランのメニューはロシア語・英語・ベトナム語の3言語表記が標準になり、「マッサージ」の看板にキリル文字が並ぶ。不動産の賃貸広告もロシア語版がある。ホテルのフロントスタッフがロシア語を話せることは、採用条件に近い。

2022年のウクライナ侵攻後、ロシア人の流入は一時的に増えた面すらある。国際的な制裁を受けて渡航先が限られるロシア人にとって、ビザなしで長期滞在できるベトナムは選択肢として残り続けたからだ。

中国人観光客の波

ロシア人に加えて、中国人観光客の波もニャチャンを変えた。中国からの団体ツアーは価格帯が低く、専用のホテル・レストラン・お土産店が形成された。一部のエリアでは中国語の看板がロシア語より多い。

この二重の外国人需要が、ニャチャンの経済構造を決定的に変えた。ビーチ周辺の飲食・宿泊・マッサージ業は外国人観光客向けに特化し、価格帯が上がった。同時にサービスの質は「量をこなす」方向に寄り、ダナンやホイアンとは異なる空気感が生まれた。

日本人にとってのニャチャン

日本人のベトナム旅行先としてはホーチミンとハノイが圧倒的に多く、リゾートならダナンが定番だ。ニャチャンの日本語情報は少ない。

住む場所としてのニャチャンはどうか。家賃はホーチミンの半額以下で、ワンルームのサービスアパートメントが月300〜500USD(約4.7〜7.8万円)で見つかる。生活費全体でも月800〜1,200USD(約12.4〜18.6万円)で暮らせる。リモートワーカーの滞在先としてはコストパフォーマンスが高い。

ただし、日本語が通じる場面はほぼない。日系の飲食店やクリニックもごく少数だ。ホーチミンやハノイの日本人コミュニティとは異なり、ニャチャンの日本人は「わざわざ選んで来た人」が多く、コミュニティとしてのまとまりは薄い。

リゾート都市の二面性

ニャチャンの面白さは、観光資源としてのポテンシャルと、実際に形成された都市の性格のギャップにある。

海はきれいだ。沖合のホンムン島周辺はダイビングスポットとして東南アジアでも上位に入る。ポーナガル塔(チャンパ王国時代の遺跡)は歴史的な見どころがある。泥温泉(マッドバス)は他のベトナムの都市にはないユニークな体験だ。

しかし都市の表層はロシア語と中国語のレイヤーで覆われている。看板の言語が街の主役を示す。ニャチャンは「ベトナムのハワイ」ではなく、「ロシアと中国の保養地がベトナムにある」という構造だ。

これが良いとか悪いという話ではない。需要がある場所に供給が集まり、供給が集まった結果として都市の性格が決まった。ニャチャンは、グローバリゼーションが東南アジアのビーチタウンにどう作用するかの、ひとつの標本だ。


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