ベトナムの外国人不動産所有——50年リースと所有権の現実
ベトナムでは外国人が不動産を「所有」できるが、実態は50年のリース(土地使用権)。2015年住宅法改正後の現行ルール・マンション購入の外国人割当・更新可否を整理する。
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「ベトナムでマンションを買った」という在住日本人の話を耳にすることがある。ただし、「所有した」の中身は日本とは根本的に異なる。ベトナムでの外国人不動産取得の現実を整理する。
外国人が不動産を「所有」できる制度
2015年の改正住宅法により、外国人がベトナムの住宅(マンション・一戸建て)を購入できるようになった。ただし条件がある。
主な条件:
- 有効なビザを持ちベトナムに入国できる外国人(観光ビザでも可)
- 購入できるのは住宅目的の物件のみ(商業用不動産は別ルール)
- 1コンドミニアムプロジェクトに外国人が購入できる戸数は全戸数の30%まで
- 1住宅エリア(ward)内で外国人が購入できる一戸建ては250棟まで
「所有権」の実態は50年リース
ここが最大のポイントだ。ベトナムでは土地は国有。個人・法人が持てるのは「土地使用権(Land Use Right Certificate / いわゆる「赤い本」)」だ。
外国人の場合、この使用権期間が50年に限定される。期限後は1回だけ延長申請ができるが、更新が保証されているわけではない。
「50年後に物件が返還になる可能性がある」という事実は、購入前に必ず理解しておく必要がある。
実際のリスク
転売: 外国人から外国人への売買は可能だが、買い手も50年の残余期間を引き継ぐ。築10年の物件を購入した場合、残り40年の使用権を取得することになる。
相続: 外国人所有者が亡くなった場合の相続ルールは複雑で、まだ判例・実務の整備が進んでいない部分がある。
法改正リスク: 外国人不動産保有制度はまだ歴史が浅く、政策変更が起きた場合の予測がしにくい。
実際の購入価格帯
ホーチミン市:
- 市内中心部(1区・3区): 3,000〜8,000USD/㎡
- 郊外(7区・ビンタン区): 1,500〜4,000USD/㎡
50㎡のアパートを3,000USD/㎡で購入すると150,000USD(約2,100万円)。ベトナムの不動産価格は近年急騰しており、「安くて買いやすい」という感覚はすでに薄れている。
賃貸か購入か
在住外国人の大多数は賃貸を選んでいる。理由は:
- 50年リースという所有権の制約
- 将来的な帰国・第三国移住の可能性
- 賃貸でも良質な物件が選べる
「ベトナムで家を買う」という選択は、長期定住が確定している・資産形成として割り切れる、という両方の要件が揃った場合に限ってリスクを取る判断になる。短期〜中期の在住者には賃貸が現実的な選択だ。