ベトナム不動産投資ガイド——50年リースホールドと30%枠の中で勝つ方法
ベトナムで不動産投資を検討する日本人向けに、外国人の所有制限(50年リース・30%枠)・税制・エリア別利回り・ホーチミンの価格推移・購入手続き・リスクを解説。
この記事の日本円換算は、1USD≒159円で計算しています(2026年3月時点)。為替は変動するので、USD建ての金額を基準にしてください。
ベトナムの不動産市場は東南アジアで最も注目されている市場のひとつ。ホーチミンのアパートメント平均価格はUSD 4,057/sqm(2025年Q4、約64.5万円/sqm)に達し、前年比+24.3%の急上昇を記録した。
しかし、外国人投資家にとってベトナムは「所有のハードルが高い国」でもある。土地は買えない。アパートメントは50年のリースホールド。1棟あたり外国人の保有比率は30%まで。
制約が多い市場だからこそ、ルールを正確に理解してから動く必要がある。
外国人の所有ルール——土地は買えない、アパートメントは50年
ベトナムの外国人不動産所有は、住宅法2023年(2024年8月施行)と土地法2024年(2025年1月施行)が現行の法的枠組み。
買えるもの・買えないもの
| 物件タイプ | 外国人の購入 | 備考 |
|---|---|---|
| アパートメント(コンドミニアム) | 可 | 1棟あたり外国人保有率30%まで |
| 一戸建て住宅(House) | 可 | 同一エリア内で最大250戸まで |
| 土地 | 不可 | 土地使用権は取得できない |
| 農地・非住居用地 | 不可 | |
| 商業用不動産 | 条件付きで可 | 法人設立が必要な場合あり |
所有期間と更新
外国人の所有期間は最大50年。リースではなく「所有権」と位置づけられているが、実質的には50年間の使用権。期限到来時に更新申請が可能。
更新が認められるかどうかは法律上は担保されているが、まだ50年を迎えた外国人所有のケースが存在しないため、実際の運用は未知数な部分が残る。
30%枠の制約
アパートメントの場合、1つのプロジェクト(棟)に対して外国人が所有できるのは全戸数の30%まで。人気物件では枠がすでに埋まっていることもある。
購入前にデベロッパーまたは管理会社に「外国人枠の残り」を確認する必要がある。枠が満杯の物件は、外国人間でのリセールしかできない。
一戸建て住宅の場合は、同一エリア内で全プロジェクト合計250戸が外国人の上限。ただし、アパートメント投資が主流であり、一戸建てを投資目的で購入するケースは少ない。
税金——購入時・保有時・売却時のコスト
ベトナムの不動産にかかる税金は、オーストラリアやシンガポールと比べるとシンプル。ただし、賃貸収入にはVAT+個人所得税がかかる。
購入時のコスト
| 項目 | 税率/金額 |
|---|---|
| VAT(付加価値税) | 物件価格の10%(新築・デベロッパーから購入時。リセールは非課税) |
| 登録税(Registration Fee) | 物件価格の0.5% |
| 修繕積立金(Maintenance Fund) | 物件価格の2%(一括払い・購入時) |
| 公証費用 | 約USD 50 + 10億VND超の部分の0.06% |
新築物件をデベロッパーから購入する場合、VATの10%が大きい。リセール市場で中古物件を購入する場合はVATがかからないため、購入コストは大幅に下がる。
修繕積立金の2%は一括で支払い、将来の建物メンテナンスに充てられる。日本の修繕積立金と違い、毎月ではなく一括前払い。
賃貸収入にかかる税金
| 項目 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
| VAT | 5%(賃料総額に対して) | 年間5億VND以下の場合は免除(2026年1月〜) |
| 個人所得税(PIT) | 5%(賃料総額に対して) | 同上 |
| 合計 | 10% | 経費控除なし。賃料総額に対して課税 |
2026年1月から、年間賃料が5億VND(約USD 19,200、約305万円)以下の場合はVATとPITの両方が免除されるようになった。以前は1億VND(約60万円)が免税ラインだったので、大幅に引き上げられた。
注意点として、ベトナムの賃貸所得税は経費控除なしで賃料総額に対してフラットに10%が課税される。日本のように経費(管理費、修繕費、減価償却費等)を差し引いた利益に対して課税されるわけではない。
売却時の税金
| 項目 | 税率 |
|---|---|
| 個人所得税(PIT) | 譲渡価格の2% |
売却時の課税は非常にシンプル。譲渡価格(売却額)の2%。キャピタルゲイン(利益額)ではなく、譲渡価格全体に対して2%がかかる点に注意。
たとえばUSD 200,000で購入した物件をUSD 300,000で売却した場合、利益のUSD 100,000ではなく売却価格のUSD 300,000の2%=USD 6,000(約95.4万円)が税額になる。
利益が小さい場合は割高に感じるが、大きなキャピタルゲインが出た場合は実質税率がかなり低くなる仕組み。
日本側の課税
日本の税務居住者は、ベトナムの賃貸収入・売却益を日本で確定申告する義務がある。日越租税条約により二重課税の調整はできるが、ベトナムの税率が日本より低いため、差額分は日本で課税される。
賃貸利回り——ホーチミンとハノイで異なるプロファイル
ベトナム全体の平均グロス賃貸利回りは約3.85〜4.0%(2025〜2026年)。東南アジアの中では中程度の水準。
ホーチミン市(HCMC)のエリア別利回り
| エリア | グロス利回り | 特徴 |
|---|---|---|
| District 10 | 5〜6% | 雇用密集地。手頃な購入価格で利回りが高い |
| Tân Bình | 5〜6% | 空港近く。単身者・ビジネス客の需要 |
| District 4 | 5〜6% | District 1隣接。再開発が進行中 |
| District 2(Thu Duc市) | 3.5〜4.5% | 外国人居住エリア。日本人学校近く |
| District 7 | 3.5〜4.5% | Phú Mỹ Hưng。韓国系・日系コミュニティ |
| District 1 | 2.5〜3.5% | 中心部。物件価格が高く利回りは低め |
ハノイのエリア別利回り
| エリア | グロス利回り | 特徴 |
|---|---|---|
| Đống Đa | 4.5〜5.5% | 大学・オフィス密集。賃貸需要が安定 |
| Cầu Giấy | 4.5〜5.5% | IT企業集積。若いプロフェッショナルの需要 |
| Ba Đình | 3.0〜4.0% | 政府機関周辺。駐在員需要あり |
| Tây Hồ(西湖) | 3.0〜4.0% | 外国人居住エリア。空室率高めの報告あり |
物件タイプ別の利回り
| 物件タイプ | グロス利回り |
|---|---|
| アパートメント / コンドミニアム | 3.5〜4.8% |
| タウンハウス | 4.0〜6.0% |
| ヴィラ | 2.5〜4.0% |
タウンハウスは平米単価が低く、ファミリー層からの賃貸需要が安定しているため、利回りが高い傾向がある。ただし外国人はタウンハウスの購入に250戸制限があるうえ、物件数自体が少ない。
ネット利回りは大幅に下がる
グロスからネットへの目減りは1.5〜2.0ポイント程度。グロス4%ならネットは2.0〜2.5%になる。管理費、空室期間、修繕費、賃貸所得税(10%)を差し引くと、キャッシュフローはかなり薄い。
ハノイのサービスアパートメントは空室率14%という報告もあり、外国人向けプレミアム物件は需要と供給のミスマッチが起きやすい。
物件価格の推移
ホーチミン市の価格推移
| 時期 | 平均価格(USD/sqm) | 日本円換算(/sqm) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 2025年Q4 | $4,057 | 約64.5万円 | +24.3% |
| 2025年Q3 | $3,424 | 約54.4万円 | — |
| 2024年Q4 | $3,265 | — | — |
2025年Q4はQ3比でも+18.5%と、四半期ベースでも急上昇した。
エリア別の価格帯(2026年時点)
| エリア | 価格帯(VND/sqm) | USD換算(/sqm) | 日本円換算(/sqm) |
|---|---|---|---|
| District 1 / Thu Thiem | 1.4〜3.0億 | $5,400〜11,500 | 約86〜183万円 |
| District 2 / District 7 | 0.6〜1.5億 | $2,300〜5,800 | 約37〜92万円 |
| Binh Thanh | 0.5〜1.2億 | $1,900〜4,600 | 約30〜73万円 |
| Binh Chanh / Binh Tan | 0.35〜0.8億 | $1,350〜3,080 | 約21〜49万円 |
東京と比較すると、ホーチミン中心部(District 1)のハイエンド物件は東京23区の平均に近い価格帯に達している。一方、郊外エリアはまだ手頃な水準。
市場動向
2025年は全国で58万件超の不動産取引が成立。アパートメント販売は11,500戸で吸収率82%と過去5年で最高水準。
2026年の見通しは「緩やかな回復」。インフラ投資(ホーチミンのメトロ開通、新高速道路等)、段階的な信用緩和、外国人の継続的な関心が支えになるが、急上昇は一服するとの見方が多い。
購入プロセスの流れ
Step 1: 物件選定と外国人枠の確認 デベロッパーまたは不動産エージェントを通じて物件を探す。購入前に必ず「外国人所有枠(30%)の残り」を確認する。枠が埋まっている物件は購入できない。
Step 2: 予約と手付金 物件を押さえるために予約金(Booking Fee)を支払う。通常USD 1,000〜5,000程度。これは後の支払いに充当される。
Step 3: 売買契約(SPA)の締結 Sale and Purchase Agreementに署名する。ベトナム語の契約書が正本となるため、英語版・日本語版は参考訳扱い。弁護士のレビューを強く推奨する。
Step 4: 分割払い デベロッパーからの新築購入の場合、建設進捗に応じた分割払い(Progress Payment)が一般的。通常、引渡しまでに物件価格の70%、引渡し後に残り30%を支払う。
Step 5: VAT・登録税・修繕積立金の支払い VAT(10%)、登録税(0.5%)、修繕積立金(2%)を支払う。
Step 6: ピンクブック(所有権証明書)の取得 全額支払い後、デベロッパーが「ピンクブック」(Giấy chứng nhận)の申請手続きを行う。発行まで通常6ヶ月〜1年以上かかることがある。ピンクブックがないとリセールができないため、発行時期の確認は必須。
全プロセスは新築Off-planの場合2〜3年(建設期間含む)、完成済み物件なら3〜6ヶ月程度。
リスクと注意点
1. 50年リースホールドの不確実性
50年後に更新が認められる法的根拠はあるが、実際に更新されたケースはまだない。将来的に法改正で条件が変わる可能性もゼロではない。
2. 30%枠の流動性制約
外国人枠が埋まった物件を売却する場合、買い手は「外国人の枠を引き継ぐ外国人」か「ベトナム人」に限定される。外国人が枠ごと引き継ぐにはデベロッパーの承認が必要なケースもあり、リセールのハードルが上がる。
3. ピンクブックの遅延
ピンクブックの発行が遅れるケースは珍しくない。発行まで2〜3年かかることもある。ピンクブックなしでは売却ができないため、出口戦略に影響する。
4. 法制度の変動リスク
ベトナムの不動産関連法は頻繁に改正される。住宅法2023年と土地法2024年で大きく変わったばかり。外国人の所有条件が将来的に緩和されることも、逆に制限が強化されることもありえる。
5. 為替リスク
ベトナムドン(VND)は長期的に対ドルで緩やかに減価する傾向がある。物件価格はUSD建てで取引されることが多いが、賃料はVND建てが一般的。VNDの減価は実質的な賃貸収入を目減りさせる要因になる。
6. 透明性の課題
不動産市場の情報透明性は先進国と比べると低い。取引価格データが公開されていない、デベロッパーの財務情報が不透明、法律の解釈が地域によって異なる——といった課題がある。信頼できる現地の弁護士・エージェントの存在が他の国以上に重要になる。
7. ホーチミン市の短期賃貸規制
2025年2月にホーチミン市が複合用途の観光開発地域での短期賃貸を制限する規制を発表した。Airbnb等の短期賃貸を収益源として考えている場合は、規制の最新動向を確認する必要がある。
まとめ——ベトナム不動産投資の向き・不向き
ベトナムは経済成長率が高く、不動産市場も急速に拡大している。ホーチミンのアパートメント価格は2025年Q4に前年比+24.3%と急騰した。成長市場へのエクスポージャーを取りたい投資家にとっては魅力的。
ただし、50年リースホールド、30%の外国人枠、ピンクブックの遅延、法制度の頻繁な変更——先進国の不動産投資とは異なるリスクプロファイルがある。
向いている人:
- ベトナムに駐在中または駐在予定で、自分で住みつつ将来的に賃貸に出すことを考えている
- 東南アジアの成長市場にキャピタルゲイン目的で投資したい(10年以上の長期視点)
- USD 100,000〜300,000程度の予算で、ホーチミンのミッドレンジ物件を狙いたい
慎重に検討したほうがいい人:
- キャッシュフロー重視(ネット利回り2〜3%では物足りない)
- 数年以内に売却する前提(ピンクブック遅延で売れない可能性がある)
- 法制度のリスクを許容できない(ルールが頻繁に変わる市場)
- 遠隔管理に不安がある(現地の管理体制が先進国ほど整っていない)
最初のステップとしては、ホーチミンまたはハノイの日系不動産エージェントに相談し、現在の外国人枠の空き状況と物件価格の相場感を掴むことになる。デベロッパーの信頼性確認と、ベトナムの不動産法に詳しい弁護士のアサインを早い段階で行うのが現実的な進め方になる。
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