革靴に白いカビが生える季節——ベトナムの湿度と暮らしの防衛戦
ベトナムの雨季は室内の湿度が高く、靴・鞄・書類・電子機器がカビの被害を受けやすい。何がやられるか、どこに手を打つかを実際の対処順で整理する。
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ベトナムに来て最初の雨季、多くの日本人が同じ経験をします。クローゼットの奥にしまっていた革靴を取り出したら、表面が白く粉を吹いている。革ジャケットも、カメラのレンズも、同じ状態になっている。
湿度が高いというのは、こういうことです。
何が最初にやられるか
被害が出やすい順に並べると、革製品、光学機器、紙、木製家具、といったところです。
革は有機物なので栄養源になり、表面積も広い。靴、鞄、ベルト、財布。使わずにしまっているものほど危険で、通気のない靴箱の中が最悪の環境になります。
カメラのレンズは、内部に生えると自力では手が出ません。修理に出しても完全には戻らないことがある。日本から持ってきた高価な機材をベトナムで失う、というのはよく聞く話です。
紙は、書類そのものより印刷面が波打つ形で劣化します。パスポートや契約書といった原本を、湿った引き出しに入れておくのは避けたい。湿気とあわせて浸水のリスクも考えると、重要書類は防水ケースに入れて高い場所に置くのが両方に効きます。全ページをスキャンしてクラウドに置いておけば、原本が傷んでも再発行の手続きが楽になる。
対処の優先順位
最も効くのは、密閉した空間に乾燥剤を入れることです。部屋全体の湿度を下げるより、守りたいものだけを囲うほうが安上がりで確実です。
カメラや精密機器なら、密閉容器に乾燥剤を入れて保管する。専用の防湿ボックスも売られていますが、密閉できる容器と繰り返し使えるシリカゲルの組み合わせでも十分機能します。
革製品は、密閉するとかえって危険な場合があります。通気があり、かつ湿気がこもらない場所に置くのが理想。クローゼットの中に除湿剤を置き、扉を時々開ける。単純ですが効きます。
除湿機は買う価値があるか
雨季に室内で仕事をする人なら、除湿機は投資に見合います。エアコンの除湿運転でも下がりますが、専用機のほうが効率がよく、温度を下げすぎずに湿度だけ落とせる。都市部の家電量販店やECサイトで手に入り、選ぶときは部屋の広さに対する除湿能力を見る。
タンクに溜まる水の量を見ると、部屋の空気にどれだけ水が含まれていたかが実感できます。一日で数リットル出る日もある。その水が、置いてある物の表面に凝結していたと考えると、対策の必要性が腹に落ちます。
湿度計も安価なので、一つ置いておくといい。数字を見ずに体感だけで判断すると、判断が遅れます。
洗濯物が乾かない
雨季の日常的な困りごとがこれです。部屋干しでは何日経っても生乾きになり、匂いが出る。
現実的な解決は、乾燥機能つきの洗濯機を持つか、近所のランドリーサービスを使うことです。ベトナムの都市部にはキロ単位で洗濯を受けてくれる店が多く、乾燥まで含めて安価に済みます。在住者の多くが、雨季だけ外注に切り替えます。
自宅で干す場合は、扇風機を回すのが最も効果的です。空気が動いていれば、湿度が高くても蒸発は進みます。除湿機と扇風機を同じ部屋で併用すると、目に見えて速くなる。
エアコンのカビ
見落とされがちなのが、エアコン内部です。冷房運転で内部が結露し、そこにカビが生える。スイッチを入れた直後の数十秒だけ酸っぱい匂いが出て、その後は消える。この「最初だけ匂う」が典型的なサインです。
対策は、冷房を切る前に送風運転を数分回して内部を乾かすこと。この習慣だけで、内部の状態がかなり変わります。定期的な清掃サービスも都市部では手配しやすく、費用も日本より抑えられることが多い。
賃貸の場合、エアコンの清掃が大家の負担か借主の負担かを契約時に確認しておくと、後でもめません。契約前に確認すべき費目のリストに、この一項目を足しておく。清掃を怠ったエアコンは効きが落ち、電気の使用量が上がって、段階制の料金では単価まで上がります。
カビが生えてしまったら
革製品は、乾いた布で表面を拭き、風通しのよい場所で乾かす。強くこすると革を傷めるので、優しく。程度によっては専門のクリーニングに出したほうが結果がいい。
胞子が飛ぶので、作業は屋外かベランダで行う。室内でやると、部屋の別の場所に移すだけになります。
そして、一度カビが出た場所は環境に問題があります。同じ場所に戻すと再発する。物を掃除するより、置き場所を変えるほうが根本的です。
湿度と付き合うということ
日本の梅雨を知っていても、ベトナムの雨季は別物です。期間が長く、気温も高い。カビにとっては年間を通じて条件が揃っている。
対策の要点は結局、通気・乾燥剤・使う頻度の三つに集約されます。使っている物にはカビが生えにくい。動かして、風を通して、乾かす。
しまい込むほど危ない、というのは、物についても知識についても同じかもしれません。雨季のクローゼットは、それを毎年思い出させてくれます。