ベトナムの不動産——外国人が所有できる物件と50年ルール
ベトナムでは外国人もマンションを購入できる。ただし所有期間は50年で、土地は買えない。2015年の法改正で何が変わったのか、制限の詳細と投資判断のポイントを解説する。
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ベトナムでは外国人がマンションを購入できます。ただし、所有期間は50年。これは「購入した日から50年」ではなく「その建物に対して最初に外国人所有権が設定された日から50年」です。つまり中古で買った場合、残り年数がさらに短くなる。この仕組みを知らずに投資判断をすると、リターン計算が根本から狂います。
2015年の法改正
2015年7月1日施行の住宅法改正(Luật Nhà ở 2014)で、外国人のベトナム不動産所有が大幅に緩和されました。それ以前は、外国人がベトナムで不動産を所有するのはほぼ不可能でした。
改正後の主なルールは以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 購入資格 | ベトナムに合法的に入国した外国人(観光ビザでも可) |
| 購入可能物件 | マンション(集合住宅)の一室 |
| 所有期間 | 最長50年(1回のみ50年延長の申請が可能) |
| 上限 | 1つのマンション棟の総戸数の30%まで |
| 土地所有 | 不可(ベトナムでは土地は「全人民の所有」) |
戸建て住宅(ビラ)も購入可能ですが、こちらはさらに制限が厳しく、特定の開発プロジェクト内に限られ、1つの行政区画内で外国人が所有できる戸建ては250戸までという上限があります。
「土地が買えない」の意味
ベトナム憲法第53条は「土地は全人民の所有に属し、国家が代表して管理する」と定めています。ベトナム人でも土地の「所有権」は持てません。持てるのは「土地使用権(Quyền sử dụng đất)」です。
ベトナム人の土地使用権は無期限ですが、外国人はこの使用権すら取得できません。外国人が買えるのはマンションの「区分所有権」のみ。建物が建っている土地の使用権は、マンションの開発業者(ベトナム法人)が保持しています。
これは、仮にマンションの建物が取り壊しになった場合、外国人オーナーは建物の残存価値に対する補償は受けられますが、土地の価値は享受できないことを意味します。
50年後はどうなるか
所有期限の50年が到来する前に、所有者は1回限り50年の延長を申請できます。延長が承認されれば最長100年。ただし、この延長制度は法律の条文上は存在しますが、実際に50年が経過した案件がまだないため、運用実態は不明です。
50年経過後に延長が認められなかった場合、所有権はベトナム国家に帰属します。補償の有無と金額については、法律に明確な規定がなく、将来の判例や追加立法に委ねられている状態です。
投資としての計算
ホーチミン市の外国人向けマンション(District 2, Thao Dien エリア)の価格帯は、2ベッドルームでUSD 150,000〜300,000(約2,325万〜4,650万円)。賃貸に出した場合のグロス利回り(表面利回り)は年4〜6%程度です。
ただし、この利回り計算で見落とされがちなポイントがあります。
50年の減価: 50年で所有権が消滅するため、建物価値は毎年2%ずつ減価する計算になります。最終的にゼロになる前提で投資判断する必要があります。
売却時の制限: 外国人から外国人への転売は可能ですが、残存年数が短くなった物件を買いたい外国人を見つけるのは容易ではありません。ベトナム人に売却する場合は、所有期間の制限がなくなるため、ベトナム人の方が買い手として有利です。
送金制限: 売却代金をベトナム国外に送金する際は、購入時にUSD(またはその他の外貨)でベトナムの銀行口座に送金した記録が必要です。現金で購入した場合や、記録が不十分な場合、売却代金の海外送金が困難になるケースがあります。
ベトナム人配偶者がいる場合
ベトナム人と結婚した外国人は、ベトナム人と同じ条件で不動産を所有できます。50年の期間制限はなく、土地使用権も取得可能です。ただし、離婚した場合の所有権の扱いは複雑になるため、法的助言を受けておく方が安全です。
不動産は在住者にとって「住む場所」であると同時に「資産の置き場」でもあります。ベトナムの50年ルールは、その両方の判断に影響を与える制度です。購入を検討する際は、ベトナムの不動産法に精通した弁護士への相談を前提にすることを勧めます。