ライスペーパーを作る村——ベトナムの伝統工芸村が残した産業の形
メコンデルタや中部には、ライスペーパー・竹細工・刺繍・陶器など伝統産業が続く工芸村がある。観光化・機械化の圧力の中で、手仕事を続ける人々の経済とコミュニティを見る。
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メコンデルタのある村では、朝から家の軒先にライスペーパー(Bánh tráng)が並べて干してある。白い円形が木の棒にかかり、朝日を浴びている。
これが「製造業」だ。工場ではなく、家庭の庭が作業場になっている。
工芸村(làng nghề)の文化
ベトナムには「làng nghề(ラン・ゲ)」と呼ばれる特定の手工業に特化した村が存在する。農業と工芸の組み合わせで生計を立ててきたコミュニティで、技術が世代から世代へ継承されてきた。
ライスペーパー(バイン・トラン)の村、セラミック(陶器)の村、竹細工の村、絹織物の村、刺繍の村——それぞれが地理的な「産地」として認識されている。
ライスペーパーの製造プロセス
ライスペーパーは米粉・水を混ぜた生地を薄く伸ばし、天日干しして作る。手作業で薄さを均一にする技術は習得に時間がかかり、経験者の技が製品の品質を左右する。
乾燥後のライスペーパーは柔軟性があり、水で戻して生春巻き・揚げ春巻きの皮として使う。地域によって厚さ・焼き目・香りが異なり、産地の個性がある。
機械化の圧力
工芸村は機械化の波に晒されている。量産機械を導入した事業者は生産コストを下げられる一方で、手工業との差別化が難しくなる。
「機械で作った方が安いが、手作りの方が風味が違う」という議論は、地域の工芸村の多くで続いている。観光客向けの「体験工芸」として手作り工程を売りにする方向性も一部で成立している。
観光と工芸村
ホイアン郊外のクアンナム省、カントー近郊のメコンデルタ——工芸村は「本物のベトナム農村を体験する」観光スポットとして整備されてきた。
日本人観光客が多い「ホイアン」ではランタン・刺繍・仕立ての工芸体験が有名で、地場産業と観光が連携している事例として知られている。
在住者として工芸村を訪れると、観光としてではなく「この産業がどう続いているか」という目線で見えてくるものが変わる。