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サイゴンと呼ぶか、ホーチミン市と呼ぶか——名前に宿る南北の記憶

公式名は「ホーチミン市」だが、地元の多くの人は今も「サイゴン」と呼ぶ。この呼び名の違いの背景には、1975年の統一前後の歴史と、南部アイデンティティの記憶が宿っている。

2026-06-04
サイゴンホーチミン市南北統一歴史アイデンティティ

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「どこに住んでるの?」「サイゴン」——ホーチミン市に住む南部出身者がこう答えることは珍しくない。

公式名称は「Thành phố Hồ Chí Minh(ホーチミン市)」。1975年の南北統一後、旧サイゴンはホーチミン(北ベトナムの指導者)の名に改められた。

でも地元の人は今も「Sài Gòn(サイゴン)」と呼ぶ。

名前の歴史的背景

「サイゴン」は17〜18世紀から使われてきた地名で、フランス植民地時代は「インドシナの真珠」と称されるほど繁栄した都市だった。ベトナム戦争中は南ベトナムの首都として機能し、1975年4月30日、北ベトナム軍の進攻で「陥落」した。

その後、都市名は「ホーチミン市」に改名された。政治的なメッセージが込められた名前の変更だ。

南部住民の感情

名前を変えることへの南部の人々の感情は複雑だ。

「サイゴン」という言葉を使い続けることは、単なる慣れではなく、「この街の記憶は変えられない」という静かな抵抗の意味を持つ側面がある——と感じる人がいる。

ただし今の若い世代(1975年以降生まれ)にとっては「サイゴン」は感情的な意味より習慣的な言い方として定着している面もある。

実際の使い分け

日常会話では「Sài Gòn」が自然に使われる。公式文書・ニュース・学校教育では「Thành phố Hồ Chí Minh」だ。

地元の屋台・友人との会話では「サイゴン」、政府機関・フォーマルな場面では「ホーチミン市」——多くのベトナム人が場に応じて使い分けている。

外国人が「サイゴン」と言っても特に問題にはならない。むしろ「この人はベトナムの文化を知っている」という印象を与えることもある。

観光インフラと名前

タンソンニャット国際空港のIATAコードは「SGN」——Saigonの略だ。空港コードは変更されていない。これもこの都市の歴史の複雑さを体現している。

在住するにあたって、「サイゴンとホーチミン市のどちらが正しいか」を気にするより、「どちらも使われていて、それぞれに意味がある」と理解する方が、この街の実態に近い。

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