ベトナムの税制——183日ルールと海外所得課税、日越租税条約の使い方
ベトナムの個人所得税を解説。居住者判定の183日ルール、累進税率5〜35%の7段階、非居住者の一律20%課税、海外所得の取り扱い、日越租税条約で二重課税を防ぐ方法まで。
この記事の日本円換算は、1USD≒158円で計算しています(2026年4月時点)。税額計算はVND建てで行われます。参考値として1万VND≒60円(変動する)。
ベトナムで働く日本人が最初に混乱するのは、「自分は居住者なのか非居住者なのか」という判定だ。
この区分によって税率が劇的に変わる。居住者なら累進税率(5〜35%)、非居住者なら一律20%。しかもベトナムの居住者と判定された場合、海外からの所得にも課税される可能性がある。日本との租税条約を使えば二重課税は防げるが、知らずに放置すると両国で課税されることになる。
居住者と非居住者の判定
ベトナムの個人所得税法(PIT法)では、以下のいずれかに該当する場合に「税務上の居住者(tax resident)」と判定される。
居住者になる条件(いずれか一方を満たせば居住者)
条件1: 183日ルール
- 当該課税年度内(1月1日〜12月31日)にベトナムに183日以上滞在
条件2: 永続的居住地(habitual abode)
- ベトナムに恒久的な住居登録がある、または
- 12ヶ月超の賃貸契約を締結した住居がある
183日の計算は、入出国日を含めてカウントする。短期の出張・一時帰国を繰り返しながら年間の合計を管理する必要がある。
非居住者の判定
上記のいずれにも該当しない場合は非居住者。出張・短期プロジェクト等で年間滞在が183日未満の場合は非居住者扱いになる。
税率の違い
居住者:累進税率(7段階)
| 課税所得(月額)VND | 税率 |
|---|---|
| 〜500万VND | 5% |
| 500万〜1,000万VND | 10% |
| 1,000万〜1,800万VND | 15% |
| 1,800万〜3,200万VND | 20% |
| 3,200万〜5,200万VND | 25% |
| 5,200万〜8,000万VND | 30% |
| 8,000万VND超 | 35% |
※ 課税所得は給与からの基礎控除(本人・扶養控除)を差し引いた後の金額。
本人控除(Personal Allowance): 月1,100万VND(2024年時点。改正される可能性あり)
月収3,500万VND(約210万円)のケースで計算すると、控除後の課税所得に応じて実効税率は20〜25%程度になる。
非居住者:一律20%
ベトナム国内源泉所得に対して一律20%。累進課税ではないため、高収入の場合には居住者より有利になることもある。ただし海外所得は非課税(ベトナム国内源泉のみ)。
海外所得の課税(居住者の場合)
ベトナム税務上の居住者になると、ベトナム国内外の全世界所得が課税対象になる。
つまり、日本の企業から給与を受け取っている場合や、日本の不動産賃料・配当を受け取っている場合も理論上は課税対象。
ただし、日越租税条約(後述)があれば二重課税を防ぐことができる。
日越租税条約の使い方
日本とベトナムの間には「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約」が締結されている。
二重課税の防ぎ方
ベトナムで課税された所得について、日本で確定申告する際に「外国税額控除」を適用することができる。
手順の概要(日本側の対応):
- ベトナムで納税した税額の証明書(Tax Payment Receipt等)を取得
- 日本の確定申告で「外国税額控除」を申請
- 日本の税額からベトナムで支払った税額を控除
これにより、同じ所得について日越双方で課税されることを防げる。
租税条約が適用されないケース
- 特定の所得種別(利子・配当・使用料等)は条約で別途取り扱いが定められている
- 実態に即した居住地判定(タイブレーカー条項)が適用される場合がある
個人の状況によって条約の適用範囲が変わるため、複雑なケースは税理士(ベトナム税務に詳しい日系会計事務所等)への相談が確実。
年末調整・確定申告の仕組み
ベトナムでは、雇用主が月々の給与から源泉徴収(PIT withholding)を行う。
年末に雇用主が年間調整を行うケースもあるが、副収入がある場合・複数の雇用源がある場合・フリーランス的な報酬がある場合は自分での申告(個人申告)が必要になる。
申告期限: 翌年3月31日が個人PIT申告の一般的な期限(年度・状況により変わる場合あり)。
社会保険との関係
ベトナム社会保険(BHXH)は、就労許可を持つ外国人に加入義務がある(2024年以降の動向は要確認)。
社会保険料は給与から天引きされ、所得税の計算対象(課税所得)から控除される。給与明細で「BHXH控除」と「PIT控除」の両方を確認するのが基本。
申告に必要な書類(参考)
- 雇用主発行の所得証明(Income Certificate)
- 源泉徴収票(Withholding Tax Certificate)
- 扶養控除申請書(扶養家族がいる場合)
- 外国税額控除の証明書(日本側の申告に使う場合)
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