倹約はベトナム人の誇りだった——「tiết kiệm」精神と消費文化の変化
ベトナム語に「tiết kiệm(節約・倹約)」という言葉がある。食べ物を残さない、修理して使う、必要以上に買わない——戦争と貧困を経たベトナム人の倹約哲学と、若い世代の変化を見る。
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ベトナム語に「Tiết kiệm(ティエット・キエム)」という言葉がある。「節約する」「倹約する」という意味だ。この言葉に対して、中年以上のベトナム人が持つ感情は、日本の「もったいない」に近い重みを持つ。
倹約が美徳になった歴史的背景
現在50代以上のベトナム人は、戦争・物資不足・経済的困難を経験した世代だ。「足りないのが当たり前」の時代を生きた記憶が、「余ったものを大切にする」「食べ物を残さない」「壊れたものは修理する」という行動習慣を作った。
「食べきれないほど作らない」「皿に盛った分は全部食べる」——この文化は、ゲストを招いたときに大量に出す「歓迎の証の料理」という文化とときに矛盾する。でも「自分の皿を完食する」という個人の行動規範としては、今も根付いている。
廃品回収業の存在
ベトナムの都市部には廃品回収業者(Đồng nát / Ve chai)が多い。紙・金属・プラスチック・電子機器——古いものを細かく分別して回収し、リサイクル業者に売る。
「物を捨てる前に価値を見出す」という倹約文化が、廃品回収という職業の需要を支えている。日本人在住者が「いらなくなった家具・家電をどう処理するか」に悩んだとき、廃品回収業者が買い取るという選択肢が存在することに驚くケースがある。
修理文化の継続
「壊れたら買い直す」という使い捨て文化と、「壊れたら修理する」という倹約文化が今のベトナムで共存している。
路地の修理屋(靴・電器・洋服・バイク)は今も需要がある。若い世代が「新しいのを買う方が早い」と考え始めていても、親世代が「直せるものは直す」と教える場面は続いている。
若い世代との価値観のギャップ
経済成長とともに育った若い世代(Z世代)は、「倹約」より「体験・ブランド・SNS映え」に関心を向ける傾向がある。
「親は節約を言うけど、自分たちは稼いで楽しみたい」——この世代間のギャップは、ベトナムが豊かになるにつれて拡大している。
どちらの価値観が「正しい」かではなく、急速な経済変化の中で価値観の地殻変動が起きていることが、この国の今だ。